第2回「中学時代」<1/2>

 
 皆さん、こんにちは(おはようございます/こんばんは)。「くのいち」ことクノテツヤです。

 今回の「空想ラジオ」は、前回(第1回)と時期的にかぶりますが、本格的に音楽に目覚めた14才前後、中学時代の思い出深い曲をお送りしたいと思います。

―1曲目―

 今回の1曲目は、発表されたのが1977年、僕がまだ小学生のときの曲です。初めて聴いたのがいつだったかは定かでないのですが、中学時代に聴いていた「百万人の英語」というラジオの英語教育番組で、講師の小林克也さんがこの曲を取り上げていたことを、なぜだかとてもよく覚えています。

 メロディー、テンポ、歌声、演奏、コーラス、アレンジ……と、あらゆる要素が完璧な形で揃った、ポピュラー・ミュージックのひとつの理想形と言える名曲です。聴いてください。

 アバは、この「ダンシング・クイーン」をはじめ、数多くの素晴らしい曲を、次々と世に送り出して大ヒットさせていました。そのあまりにも完璧すぎる曲作りに、「アバはコンピューターを使ってヒット曲を作っている」などという、嫉妬としか思えないような怪しい噂を耳にしたことがあります。それ位、当時のアバの人気は凄かったということですね。
あれから約半世紀が過ぎ、いまやAI(人工知能)に曲を作らせるなんてことが当たり前に出来てしまう、何ともすごい世の中になってしまいました……が、アバのように時代を超えて愛される音楽を、果たしてAIは産み出すことが出来るのでしょうか?

 ところで、ハードロック/ヘヴィーメタルなどの激しい音楽が大好きな僕は、同時にアバのような王道ポップスも大好きな自分に、何となく不義理をはたらいているような後ろめたさを感じていて、自分の中でどう折り合いをつければいいか分からず、悶々としていました。ところが、ある雑誌のインタビュー記事で、元ディープ・パープル、当時レインボーのリッチー・ブラックモアは「アバが好き」だと知るや、心強い味方を得たような気分になり、胸のモヤモヤが一気に吹き飛びました。
それ以来、「好きなんだから仕方ないじゃん」と自分の気持ちにより素直に……ある意味、無節操さに拍車がかかり、どんどん音楽の深みにはまっていくのでした。リッチーに感謝。

―2曲目―

 今でも、イントロを聴いた瞬間、夜中にドキドキしながらラジオでこの曲を聴いていた頃の部屋の景色が頭の中に浮かんできて、すっかり中学生の頃の自分に戻ってしまいます。聴いてください。

 有名な話ですが、MTVで初めてオンエアーされたビデオクリップが、この「ビデオ(映像)がラジオスターを葬り去った」と歌う「ラジオスターの悲劇」だったというのは、あの時代を象徴する興味深いエピソードです。

 あれから40年以上経ったいま、結局、ラジオというメディアはちゃんと生き残っていて、日本では「ラジコ」の登場もあり、もしかしたら、あの頃よりもラジオは盛り上がっているように感じます。「ラジコ」といえば、僕自身もその恩恵に預かっていて、静岡にいながらにして、FM長崎の「ジャンゴ・バンゴ・デラックス」を聴くことが出来るなんて、本当にありがたいことです。ラジオ万歳!

―3曲目―

 この曲のカッコ良さは、イントロのドラムを聴いた瞬間に分かります。
ストレートで力強いドラムが、この曲を強烈に印象づけるリズム・パターンを叩き出し、やがて他の楽器が重なってきて、続く「ジャーン、ジャ・ジャ・ジャーン」のキメでノックアウト。シンプルでノリが良く、つい体が動き出してしまう、そして、つい口ずさみたくなる、カッコ良くて覚えやすい中毒性のあるフレーズにみんなが夢中になり、大ヒットした曲です。聴いてください。

 数年前、僕が通っている音楽教室の発表会で「マイ・シャローナ」を叩くことになりました。大好きな曲だったので大喜びでしたが、いざ練習を始めて思い知ったのは、この曲はノリ一発でいける曲かと思いきや……「ドド・ダダ・ドン・タン・ドン・タン・ドド・タド」という印象的なリズム・パターンをはじめ、数々のキメ、途中のギター・ソロ部分への展開、随所に入れてくるセンスのいい小技など、実際に叩いて、あのノリとニュアンスを出すには、なかなかのテクニックが要求される曲だということでした。
この時に色々調べて分かったのは、ザ・ナックのオリジナル・ドラマーであるブルース・ゲイリーさんは、過去にクリームのジャック・ブルースとバンドを共にしていたり、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、ロッド・スチュワート、シェリル・クロウ……など、多くの錚々(そうそう)たるミュージシャンのレコーディングやツアーに参加するなど、皆に信頼された腕利きのドラマーだったのです。お見それいたしました。

 ちなみに、ザ・ナックが1998年に発表した「ズーム」というアルバムでは、巨大な要塞ドラム・セットで有名なテリー・ボジオ(元フランク・ザッパ・バンド~UK~ミッシング・パーソンズ)がドラムを叩いていたり、You Tubeで観たザ・ナックの日本におけるライヴ(2005年フジ・ロック・フェスティバル)映像では、MR.BIGのパット・トーピーがドラムを叩いていたりと、ドラム好きにとっては、なかなか目が離せないバンドなのでした。

―4曲目―

 今さらながら、よくこんな贅沢な組み合わせが実現したものだ、と驚くばかりです。イントロからいきなり、壮大できらめく音宇宙に連れて行ってくれます。聴いてください。

 映画「ザナドゥ」のサウンドトラック盤から、タイトル曲の「ザナドゥ」をお送りしました。残念ながら、肝心の映画をいまだに観たことはないのですが、そのサントラ盤は、エレクトリック・ライト・オーケストラ(以下、”E.L.O.”)とオリヴィア・ニュートン・ジョン、という豪華な組み合わせが音楽を担当している話題性と、その期待を裏切らない充実した内容となっています。アナログでは、A/B面を、E.L.O.サイド/オリヴィア・サイドで分け合っていて、特にE.L.O.サイドの充実ぶりは半端なく、感激ものです。ちなみに、この「ザナドゥ」という曲は、E.L.O.サイドのラストに収められています。

 いくつになっても瑞々(みずみず)しいオリヴィア・ニュートン・ジョンの麗しい歌声と、ポップの魔術師ジェフ・リンの手による楽曲が織り成す、まるで魔法のような魅力あふれるこの曲は、タイトルの通り、僕らを音楽のザナドゥ(桃源郷・理想郷)に誘(いざな)ってくれます。この曲をきっかけに、僕のE.L.O.に対する興味は俄然高まり、その後、どっぷりハマっていくのです。

―5曲目―

 ドラム・ロールのフェードインで幕を開けるこの曲を初めてラジオで聴いたとき、その疾走感あふれる激しい曲調に、「おぉっ!何だ、このカッコいい曲は!」と胸が高鳴りました。
これは、ある女性ミュージシャンの曲なのですが、僕は最初、彼女のことを少し強面の女性ロッカーだと勝手に思い込んでいました。後に、それは大きな誤解だったと分かりました。聴いてください。

 この曲が収められている「激愛」(原題:”Mad Love”)というアルバムのジャケットが、これまたパンクな感じでカッコいいのです。

 初めて聴いた曲がこの「お願いだから」、初めて見たヴィジュアルが「激愛」のジャケット……となれば、彼女のことを、少し突っ張った感じのカッコいい姉御(あねご)ロッカーだと思ってしまうのも無理ないですよね?
実際のリンダ・ロンシュタットは、カントリーやフォーク・ロックをルーツに持った、アメリカ西海岸ひいては全米を代表する「歌姫」と呼ばれた実力派の女性シンガーです。

 ちなみに、彼女のために集められた西海岸の腕利きミュージシャン達によるバック・バンドが、後のイーグルス誕生につながったのだとか……こんな話を聞いた日には、もう胸のワクワクが止まらなくなってしまいます。これだから、音楽はやめられません。

<つづく>