第10回「高校時代 ②」


 皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。

 さて、2025年の第一回目は、前回に引き続き高校時代の音楽遍歴を辿りたいと思います。
余計な前置きは抜きにして、早速行ってみましょう。

―1曲目―

 何だかんだ言っても、ハード・ロック最大の魅力は、問答無用の破壊力を持ったカッコいいリフです。そして、リフと言えばこのバンド。聴いてください。

 この曲は、1972年に発表されたブラック・サバス4枚目のアルバム「ブラック・サバス Vol. 4」の冒頭を飾る大曲(約8分!)です。ブラック・サバスの数ある名作の中でも、屈指の名リフ・名フレーズが贅沢に詰め込まれたまるで宝箱のような傑作アルバム「Vol. 4」、その幕開けにふさわしい目くるめく展開にドキドキ・ワクワクさせられっ放しの1曲です。
 高校時代、ついにオジー・オズボーン在籍時のオリジナル・ブラック・サバスに手をつけ始めました。何から聴き始めようか迷いましたが、まずはブラック・サバスの最高傑作とよく言われている「Vol.4」を選びました。これが見事に大当たり。気分爆上がりのカッコいいリフの嵐、クラクラしそうなしびれるフレーズの連続……と、あまりの凄さに、ドーパミン出まくりのナチュラル・ハイ状態。やばいものに手を出してしまいました。

―2曲目―

 ロックの大きな魅力の一つに「不良性」があります。
残念ながら(?)、中途半端で意気地なしの僕は、実生活で「不良」になることは出来ませんでしたが、いつも心の中には不良に対する憧れがありました。そして、何歳になっても、「不良」の持つ独特の危なさとかカッコ良さに憧れを抱いてしまいます。
 今や超大物セレブのこのバンドも、かつては相当やばい「不良」オーラを放っていたようです。残念ながら、僕は彼らの全盛期をリアルタイムでは知りませんが、当時の姿を雑誌や映像で見るだけでも、やばい感じがビリビリと伝わってきます。聴いてください。

 これは、1976年に発表されたエアロスミス4枚目の名作アルバム「ロックス」(当時のアナログ盤)のB面アタマを飾る1曲です。全体的に硬質な印象のアルバム「ロックス」の中では、その明るさとルーズさが際立つキャッチーな曲です。
 エアロスミスは、70年代当時、雑誌「ミュージックライフ」において、キッス、クイーンと共に3大バンドと呼ばれていました。同時に、キッス、チープ・トリックと並ぶ3大アメリカン・ハード・ロック・バンドとも呼ばれていて、それは絶大な人気を誇っていました。キッスで本格的に洋楽に目覚めた僕は、ほぼ同時にクイーンの洗礼を受け、ほどなくチープ・トリックの甘い罠にかかり……と、ここまでが中学時代。
 そして迎えた高校時代、いよいよ残るはエアロスミスということで、まずは名盤の誉れ高いこの「ロックス」を手に入れました。とてもカッコいいアルバムですが、音の質感も含め、かなりテンションの高いアルバムで、馴染むまでに少し時間が掛かりました。その中で初めから文句なしに気に入ったのが、この「シック・アズ・ア・ドッグ」でした。

―3曲目―

 これぞ、70年代のアメリカン・ロックを代表する名曲のひとつです。良くも悪くも、後に産業ロックと呼ばれる「売れるロック」の基本形、そしてひとつの理想形がここにあったように思います。聴いてください。

 これは、1978年に発表されたボストンのセカンド・アルバム「ドント・ルック・バック」の冒頭を飾るアルバムのタイトル曲です。
 ボストンについては、雑誌等で何となく名前は知っていましたが、自分でレコードを買うほどの興味はありませんでした。ところが、経緯は忘れてしまいましたが、なぜか同級生からこのアルバムの輸入盤レコードをもらった(?)のです。当時、レコードを買うにあたっては、お金もないくせに国内盤に拘っていたので、輸入盤というのが気になりましたが、「せっかくもらったレコードだし……」と軽い気持ちで聴いてみたのですが、スピーカーから流れてきた、キラキラ輝くようなギターの音色、繰り出される魅力的なフレーズの数々に、すっかり魅了されてしまいました。
 アルバム全体としては、似たような印象の曲が多いのですが、このタイトル曲「ドント・ルック・バック」は別格で、壮大な広がりを感じさせるダイナミックでスペイシーな音世界、澄み渡る青空のように明るく爽快な曲調、そこに泣きの美しいメロディが彩りを加え……と、人の心をがっちり掴む要素が満載の1曲です。

―4曲目―

 過去に遡っての曲が続きましたが、ここからはまたリアルタイムで出会った曲に戻ります。

 このバンドは、いわゆる「産業ロック」と揶揄されることが多いのですが、その音楽が戦略的であろうと、自然発生的なものであろうと、「売れた」という事実は、当時、それだけ多くの人の心をつかんだということを示しています。さらに時代を超えて、多くの人の心の中に生き続けているということは、やはり絶対的な何かを持っているのだと思います。それは、結局「いいものはいい」というシンプルな話に行き着くと思うのですが、どうでしょう。聴いてください。

 この曲は、1981年に発表されたアルバム「エスケイプ」に収録されている1曲です。このアルバムで、ジャーニーは念願の全米No.1を獲得しました。
 このアルバムからのファースト・シングル「クライング・ナウ(原題:”Who’s Crying Now”)」を初めてラジオで聴いたとき、売れ線狙いのバラードっぽい感じに馴染めず、しばらくジャーニーのことを敬遠していました。
 ところが、高校の研修旅行(いわゆる修学旅行)の宿で、同級生が流していたジャーニーの「エスケイプ」を図らずも耳にした僕は、「えっ⁉ジャーニーってこんなカッコ良かったの……」と衝撃を受けました。そのとき最も印象に残ったのが、この「お前に夢中」という曲です。
 研修旅行から帰ると、すぐに「エスケイプ」を買いに行ったのは言うまでもありません。そして、アルバムを通して聴いてみたのですが、1曲目の「ドント・ストップ・ビリーヴィン」に始まり、初めは苦手だった「クライング・ナウ」も経て、ラストの「翼を広げて(原題:”Open Arms”)」まで、すべての曲がそれぞれ強烈な魅力を放っていて、その隙のない完成度の高さにあらためて衝撃を受けました。たとえ「産業ロック」と呼ばれようとも、曲が良ければ僕にとっては万々歳です。

―5曲目―

 ラジオで耳にしたこの曲をキッカケに、素晴らしいアルバムと出会うことが出来ました。
アメリカン・プログレッシヴ・ハード・ロックの代表的バンドが作り上げた、そのキャリアの頂点とも言える傑作コンセプト・アルバムから1曲、聴いてください。

 この曲は、1981年に発表されたスティクス10枚目のアルバム「パラダイス・シアター」からシングル・カットされ、全米3位のヒットを記録しました。
しかし、この曲はそれだけでなく、出だし部分のメロディがアルバム全体を貫くテーマとして、アルバム開幕時の「A.D. 1928」および閉幕時の「A.D. 1958」として繰り返し奏でられることで、全体の流れと構成をぐっと引き締め、このコンセプト・アルバムの印象を決定付けている、とても重要な曲です。
 このアルバムは、シカゴに実在した劇場「パラダイス・シアター」を物語の中心に置き、開業から閉鎖までの30年間と重なり合うように激しく移り行く時代の中で起きる出来事を、フィクションとして描いたコンセプト・アルバムとなっています。
 音楽的には、プログレ要素は微かにその名残が感じられる程度で、基本的にはポップだけれども品を感じさせ、適度なハードさも兼ね備えた、ヴァラエティに富む魅力的な曲の数々に彩られたアルバムです。ヴィジュアル的には、見開きのジャケット・ワークの素晴らしさに加え、七色に輝く模様がレコード盤面に浮かび上がる特殊加工が施されており、トータル・アートとしても高い完成度を誇っています。
 スティクス自身、最高傑作と言えるこのアルバムで初の全米No.1を獲得し、キャリアの絶頂を極めました。

―6曲目―

 「大人」っぽくて「お洒落」な曲というのは、大体が「夜」のイメージと結びついています。これも、夜中のラジオで出会った、夜の雰囲気がピッタリないかした曲です。聴いてください。

 この曲は、1982年に発表されたジョー・ジャクソン5枚目のアルバム「ナイト・アンド・デイ」からシングル・カットされ、全米・全英共に最高位6位という大ヒットを記録しました。キーボードの印象的なフレーズが耳に残る素敵な曲です。
 僕はこの曲で初めてジョー・ジャクソンを知りました。イギリス出身の彼が、活動拠点をニューヨークに移して制作したのが、この「ステッピン・アウト」を収めた「ナイト・アンド・デイ」というアルバムです。多彩な音楽性を貪欲に取り入れて、幅広い音楽活動を展開している彼の才能が実を結んだ、都会的センスに溢れた素晴らしい作品です。
 この曲を聴いていると、タイトルの通り、眠らない夜の街を彩るまばゆい光の海に足を踏み入れたくなります。もちろん、当時高校生の僕にそんなことができるわけはないのですが、想像の世界はどんなことでも可能にしてくれます。

―7曲目―

 高校時代は、いわゆる邦楽というものをほとんど聴いていませんでした。そんな当時の僕が気になっていた数少ない日本人アーティストのひとりが1983年に新譜を発表、ラジオでも特集が組まれたりしていました。聴いてください。

 これは、1983年に発表された7作目のスタジオ・アルバム「メロディーズ」の冒頭を飾る1曲です。このアルバムには、他にもシングル「高気圧ガール」とか、今や日本のクリスマス・スタンダードとなった「クリスマス・イブ」などの名曲が収められていますが、この「悲しみのJODY」を初めて聴いた時のインパクトは鮮烈なものがありました。
 イントロのシンプルだけれども印象的なドラム・フィル「ダン・ダン・ダン・ダン、ドォン」で一気に曲の世界に引き込まれます。千々に乱れる心のように揺れ動くメロディ、ファルセットで歌い上げる甘く切ないヴォーカル、身悶えんばかりのサックス・ソロ、……すべての音に、高校生だった僕の胸はたまらなくドキドキしました。この曲を聴くたびに、あの時の気持ちがよみがえります。

―8曲目―

 この時期、あるアーティストが自身のキャリアにおいて前人未到の高みに昇りつめようとしていました。僕は周囲の熱狂的な盛り上がりに乗り切れずにいたのですが、そんな僕の心を一気に惹きつける曲との出会いがありました。聴いてください。

 この曲は、マイケル・ジャクソンが1982年に発表したアルバム「スリラー」の冒頭を飾る曲で、1983年には同アルバムからの第4弾シングルとしてもリリースされた、16ビートのグルーヴが最高に気持ちいい1曲です。
 当時、周りがあまりにもマイケル・ジャクソンに対して異様な盛り上がりを見せていたので、天邪鬼な僕は「フンッ」と知らん顔を決め込んでいたのです。そんな僕に、アルバム「スリラー」を買おうと思わせたのは、大ヒットした「ビリー・ジーン」でも「今夜はビート・イット」でもなく、この「スタート・サムシング」だったのです。
 たしか、講堂の天井裏みたいなところで学園祭の準備をしているとき、誰かがマイケル・ジャクソンのテープを流していたのです。そのとき耳にしたのが「スタート・サムシング」。そのスピード感あふれるスリリングなカッコ良さにすっかり魅了された僕は、「これは買うしかない!」と、慌ててレコード屋さんに向かいました。

―9曲目―

 高校卒業を控えた1984年の初頭、ラジオから流れてきたのは、僕の大好きな2つのバンドの新曲だったのですが、どちらも、その衝撃的なイントロに思わずひっくり返ってしまいました。
 まずは、その内の1曲を聴いてください。

 この曲は、1984年に発表されたクイーン11作目のアルバム「ザ・ワークス」からの先行シングルとしてリリースされ、全英第2位をはじめとする世界的大ヒットを記録しました。アメリカの女性アーティスト レディー・ガ・ガの名前の由来となったことでも有名な曲です。
 初めてこのイントロを耳にした瞬間、まるでシンセ・ポップのような曲調に、「これがクイーン⁉」とビックリしましたが、心を優しく包み込むポップで人懐こいメロディ、夢見心地にさせてくれる柔らかな音の響き、新しい展開を見せるクイーンの姿に期待が高まりました。後で、この曲はロジャー・テイラーが書いたと知り、「言われてみれば、たしかに”らしい”曲だなぁ」と思うと同時に、ここにきて一つ突き抜けた感じがするロジャーの堂々としたポップ感覚は脱帽ものでした。

 ところで、この曲に関して、ずっと気になっていることが一つあるのです。
それは、この曲の2回目のサビ部分です。なぜ「Radio what’s new?」のあとの「Radio~」が省略され、無理やりな感じの転調を経て、そのまま「Someone still loves you」に飛んでしまったのか?何度聞いても馴染めないこの不自然な展開には、何か意図があったのでしょうか。ライヴでは、1回目のサビ同様にちゃんと「Radio~」と歌われており、やはりこの方が自然で収まりが良かったと思われるのです。
もし、この辺の経緯とか真相をご存じの方がおられたら、ぜひ情報をお寄せください。よろしくお願いします。

―10曲目―

 続いてもう1曲、聴いてください。

 これは、1984年にヴァン・ヘイレンが発表した6作目のアルバム「1984」からの先行シングルとしてリリースされ、全米No.1を記録した大ヒット曲です。
 この曲も「RADIO GA GA」同様、イントロが流れてきた瞬間、キラキラしたキーボードの音色、そしてとてつもなくポップで分かりやすいフレーズに、「これがヴァン・ヘイレン⁉」とビックリしました。ところが不思議なことに、曲を聴き終わる頃には、早くもこのキーボードの印象的なフレーズが病みつきになっていました。
 すっかり「ジャンプ」が気に入った僕は、アルバムの発売が待ち遠しくてたまりません。そして、ようやく手に入れた「1984」というアルバム、これがまたとんでもない傑作で、「1984」~「ジャンプ」以外の曲は、ほとんどがギターとドラム、つまりヴァン・ヘイレン兄弟が豪快に暴れまくる痛快なハード・ロックのオン・パレードで、頭の中はもう狂喜乱舞のお祭り騒ぎです。バンドの暴れっぷりが、それまでの本能的・衝動的なものから、制御の効いた整合性のあるものに変わったような気がして、音楽的にも一段上にシフト・チェンジしたような感じを受けました。個人的な好みから言えば、「ウェイト」という曲のキーボードが過剰にも思えますが、そんな些細なことはどうでも良くなるほど、スケールの大きな素晴らしいアルバムで、当時、夢中になって聴きまくりました。

* * *

 こうして、何とか高校3年間をやり過ごした僕は、人生をリセットするため、誰も僕のことを知らない場所を求めて、大学進学を機に清水を脱出するのでした。

-2025年最初の「空想ラジオ」、最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
今年も引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第10回「高校時代②」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
1ウィールズ・オブ・コンフュージョン
Wheels Of Confusion
ブラック・サバス
Black Sabbath
2シック・アズ・ア・ドッグ
Sick As A Dog
エアロスミス
Aerosmith
3ドント・ルック・バック
Don’t Look Back
ボストン
Boston
4お前に夢中
Stone In Love
ジャーニー
Journey
5ザ・ベスト・オブ・タイムズ
The Best Of Times
スティクス
Styx
6ステッピン・アウト
Steppin’ Out
ジョー・ジャクソン
Joe Jackson
7悲しみのJODY (She Was Crying)
Kanashimi No Jody (She Was Crying)
山下達郎
Tatsuro Yamashita
8スタート・サムシング
Wanna Be Startin’ Somethin’
マイケル・ジャクソン
Michael Jackson
9RADIO GA GA
Radio Ga Ga
クイーン
Queen
10ジャンプ
Jump
ヴァン・ヘイレン
Van Halen

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