第5回「HR/HM」<1/2>


 皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。

 さて今回は、僕の原点である「ハードロック/ヘヴィーメタル(以下「HR/HM」」を特集したいと思います。
 中2でキッスの虜(とりこ)となって以来、僕の胸を同じようにドキドキ・ワクワクさせてくれるものを求めて、どんどんロックにのめり込んでいきました。そんな中学・高校時代に出会った、今でも大好きな思い出の曲をお送りします。
 ちなみに、キッス、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、アイアン・メイデンは既に紹介しているので、今回の選曲対象からは外していますが、悪しからず(残念……)。

 それでは、早速いってみましょう。

―1曲目―

 僕が中2でロックに目覚めたのが1980年。残念ながらロックの黄金期である70年代をリアルタイムで体験することはできませんでした。60~70年代から活躍しているバンドやミュージシャンの歴史を辿ると、理由は様々ながら、多くのバンドがメンバー・チェンジを経験していることを知りました。特にバンドのフロントマンであるヴォーカリストの交代はインパクトが大きく、バンドの運命を左右しかねません。
 僕の大好きなバンドにおいても、初めて出会ったときには、既にメンバー・チェンジ後のラインアップだった、ということは珍しくありません。
このバンドに初めて出会ったのも、ヴォーカルが交代したばかりの頃でした。聴いてください。

 1980年に発表された9作目のアルバム「ヘブン・アンド・ヘル」の冒頭を飾る、HR/HM史上に残る名曲です。この曲は、アルバムのリード・トラックとしてシングル・カットもされました。この曲のすさまじいドライヴ感に、グイグイ突き動かされる感じがたまりません。
 この「ヘブン・アンド・ヘル」というアルバムは、オジー・オズボーン脱退後、元レインボーのロニー・ジェイムス・ディオをヴォーカルに迎えた新生ブラック・サバスの初アルバムです。リフの鉄人トニー・アイオミと様式美の権化ロニー・ジェイムス・ディオが出会ったことによるバンド内の化学反応が、このHR/HM史上に残る傑作アルバムを産み出しました。

 同じ1980年、オジー在籍時の代表曲「パラノイド」が英国でリバイバルヒット、全英1位を記録して話題になっていました。こちらもラジオで聴いた覚えはあるのですが、「ネオンの騎士」のあまりのカッコ良さにすっかり心を奪われていた当時の僕には、ちょっと物足りない感じがしました。
僕がオリジナルのブラック・サバスを遡って聴き始め、その沼にドップリはまっていくのは、もう少し後の話となります。

―2曲目―

 HR/HMといえば、リズムに合わせて頭を激しく上下に振る「ヘッドバンギング」という動きがよく知られています。僕自身も、ノリのいい曲が流れてくると、ついリズムに合わせて頭が動き出してしまいます。きっと「ヘッドバンギング」というのは、人間の遺伝子に備わる原始的かつ本能的な部分から湧き起こる、リズムに対しての極めて自然な身体反応だと思っているのですが、どうなんでしょう?

 僕が中3のときに出会ったこのバンドは、もし世の中に「ヘッドバンギング」係数という指標があったとしたら、間違いなくぶっちぎりのナンバーワンでしょう。聴いてください。

 1980年に発表された6作目のアルバム「バック・イン・ブラック」からお送りしました。この曲は、シングル・カットもされて、英米でトップ40ヒットを記録しています。
 この「バック・イン・ブラック」というアルバムは、今や説明の必要もないほどの歴史的名盤として評価され、また、世界史上3番目に売れたアルバム(約5,000万枚!)としても良く知られた存在となっています。当時から大好きなアルバムでしたが、まさかここまで凄いことになるとは、想像もつきませんでした……。
 ちなみに、1曲目のブラック・サバス同様、AC/DCもこの「バック・イン・ブラック」から新しいヴォーカリストを迎えています。こちらは、前任ボン・スコットの他界という悲しい出来事を乗り越えてのメンバー・チェンジでした。

 ボン・スコットに捧げられたこのアルバム……真っ黒なジャケットが印象的です。

―3曲目―

 ディープ・パープルが大好きだった僕は、そこから枝分かれした、俗にパープル・ファミリーと呼ばれる多くのバンドやミュージシャンにも興味を持ち津々で、聴くようになりました。
あるバンドは、アメリカで大成功を収め、超メジャー級の存在になりました。もちろん好きなバンドの成功は嬉しく、僕も夢中になりましたが、同時に、すっかりゴージャスになったその姿に、ちょっと複雑な気持ちを抱いていました。出会った頃のもっと熱くて生々しい姿が忘れられないのです。聴いてください。

 ホワイトスネイクが本格的にアメリカへ進出する前、1981年に発表した5作目のアルバム「カム・アンド・ゲット・イット」からお送りしました。この曲は、アルバムのリード・トラックとしてシングル・カットもされています。
聴いてのとおり、ミドルテンポでどちらかといえば地味な感じの曲ですが、僕のツボに刺さりまくる印象的なフレーズが満載で、初めて聴いた時からこの曲にベタ惚れでした。ドッシリ安定した、タイトでダイナミックな演奏に加え、バックで鳴っているジョン・ロードのキーボードが、この曲に何とも言えない威厳と風格を与えています。

 その後、どれほどの成功を収めても、どんなスター・プレイヤーが加入しても、僕にとってのホワイトスネイクと言えば、この曲、このアルバム、そして、この時のラインアップ(デヴィッド・カヴァーデール[Vo.]、バーニー・マースデン[Gu.]、ミッキー・ムーディー[Gu.]、ニール・マーレイ[Ba.]、イアン・ペイス[Dr.]、ジョン・ロード[Key.])、これで決まりです。u

―4曲目―

 僕が高校生のときによく聴いていたのが、渋谷陽一さんの「サウンドストリート(NHK-FM)」というラジオ番組です。聴きたい盛りの高校生にとって、この番組は、新旧を問わず、自分にとっての新しい音楽に出会える貴重な場所でした。高校生のお小遣いでは、月にアルバムを1枚買うのが精一杯なので、新譜特集は特にありがたかったです。気に入ったアルバムは、お小遣いのやりくりが出来るまで、エアチェックしたテープを何度も繰り返し聴いていました。
 あるバンドが1981年に発表したアルバムが番組で取り上げられました。すっかり気に入った僕は、エアチェックしたテープを何度も聴きながら、レコードを手に入れる日を待ち遠しく思っていました。聴いてください。

 レインボー5作目のアルバム「アイ・サレンダー(原題:”Difficult To Cure”)」からお送りしました。
 この曲は、イントロのギターから最後のフェードアウトまで、まったく文句のつけどころがない、完璧なハードロックの名曲だと思います。特にクラシカルな旋律を奏でるリッチー・ブラックモアのギター・ソロ、その気持ち良さは格別です。
特に個人的なツボは、キーボード・ソロを挟んで繰り返される2度目のギター・ソロの途中でジョー・リン・ターナーが叫ぶ「Hey!」。これを聴くと、なぜかいつもアタマの中にはエキゾチックな雰囲気のダンサーが登場して「Hey!」と雄叫びをあげてポーズを決める、そんなイメージが浮かんでくるのです。これは一体何なんでしょう……?

 余談ですが、レインボーもこのアルバムから新しいヴォーカリスト(3人目!)を迎えています。

―5曲目―

 アイアン・メイデンがデビューした1980年、NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)の大きなうねりが押し寄せる中、ある天才ギタリストの復活、新しいグループの結成が話題になっていました。僕はまだその人のことをよく知りませんでしたが、印象的なアルバム・ジャケットが気になって仕方ありませんでした。聴いてください。

 この曲は、1980年に発表されたデビュー・アルバム「神 ~帰ってきたフライングアロウ(原題:The Michael Schenker Group)」の冒頭を飾る、彼らの代表曲であると同時に、HR/HM史に残る名曲です。
 この「アームド・アンド・レディ」を初めて聴いたとき、キッスの「果てしなきロック・ファイアー(原題:Makin’ Love)」という曲のギター・リフが頭に浮かびました。実際には、リフの前半部分が似ているだけで、それぞれ全く違うタイプの曲ですが、どちらもカッコ良さが半端ではありません。
こういう似たリフやフレーズというのは、大抵どちらか一方が残念な感じになってしまうものですが、この2曲はどちらも文句なしにカッコいい、という珍しいパターンです。

<つづく>