第8回「中学時代 ~番外編~」


 皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。

 さて、今回はもともと高校時代の音楽遍歴に移るつもりで準備を進めていたのですが、その最中に、以前お送りした中学時代の回で紹介しきれなかった曲があまりにも多いことにあらためて気がつき、これは早い内に挽回しておかなくては、と急に思い立ってしまいました……。
そこで、今回は予定を変更して、「中学時代 ~番外編~」をお送りします。
-ということで、早速いってみましょう。

―1曲目―

 初めてラジオでこの曲を聴いたとき、「何か、洋楽って大人っぽくてカッコいいなぁ……」と憧れにも似た感情が湧き起こり、とてもドキドキしたのを覚えています。聴いてください。

 この曲は、アメリカのロック・バンド TOTOが1979年に発表したセカンド・アルバム「ハイドラ」からのシングルで、僕が初めてTOTOと出会った思い出深い曲です。
 曲全体を包み込む幻想的な雰囲気、透明感と深みを湛えた音の質感、くっきりと浮かび上がる音の輪郭、少しひんやりとした音の感触、そして抑制の効いた美しく儚げなメロディ、どれもが僕の心をとらえて離しませんでした。
 ちなみに「99」はバラードですが、大仰さとか甘ったるさのない品の良さが大好きです。この曲でヴォーカルをとっているのはギターのスティーヴ・ルカサー。専任ヴォーカルのボビー・キンボールに比べて少し線が細いけれど、あの優しく切ない彼の声こそが、この曲を完璧にしているのだと思います。

―2曲目―

 70年代終わり頃から80年にかけて、シンセサイザーなどの電子楽器を使った新しい音楽が世の中を席巻していました。その明るくカラフルで胸躍るような電子の音色は、テクノロジーの進化がもたらすと思われていた豊かなバラ色の未来、そんなワクワクする夢を僕らに見せてくれました。これは、そんな時代を代表する曲のひとつです。聴いてください。

 この曲は、「M」というイギリスの音楽ユニットが1979年に発表した曲で、英米でヒットを記録、特にアメリカではNo.1を獲得する大ヒットとなりました。
 一度聴いたら忘れることの出来ない、そのキャッチーで印象的なフレーズは、後に「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ/ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース」や「ゴーストバスターズ/レイ・パーカーJr.」のパクリ騒動を生み出したことでも話題になりました。
 僕らの世代は、この曲がばっちり記憶に刻み込まれているので、「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」や「ゴーストバスターズ」を初めて聴いたとき、思わずニヤリとしたのを覚えています。

―3曲目―

 70年代後半から80年代にかけて世界を駆け抜けたディスコ・ブーム。ザ・ローリング・スト-ンズ、ロッド・スチュワート、キッス、といった大物バンド/ミュージシャン達も次々とディスコ音楽を取り入れ、賛否両論ありながらも、結果的には皆の記憶に残る数々の名曲が産み出されました。これもそんな名曲の一つです。聴いてください。

 この曲は、アメリカの大物女性シンガー ダイアナ・ロスが1980年に発表したアルバム「ダイアナ」からのシングル曲で、全米No.1の大ヒットを記録しました。
 当時、シックの大成功で注目を集めていたナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズが、この曲を含むアルバムのプロデュースをしています。出来栄えに納得がいかなかったダイアナ・ロスがミックスに手を加えたことで、ひと悶着あったようですが、結果的に、このレコードのお陰で、しばらくチャートから遠ざかっていたダイアナ・ロスは見事に復活を遂げました。
 当時、そんな背景までは知る由もない僕でしたが、ラジオから流れてきた文句なしにカッコいいこの曲にすっかりハマってしまい、ラジオのチャート番組でこの曲を聴けるのが楽しみで仕方ありませんでした。今でも聴くたびに、あの頃のワクワクした気持ちがよみがえります。

―4曲目―

 初めてこの曲をラジオで聴いたとき、そのポップなメロディ、カラフルな音、クールでファンキーなカッコ良さに一発で虜(とりこ)になってしまいました。聴いてください。

 これは、1980年に発表されたアメリカの音楽ユニット リップス・インクのデビュー曲で、全米No.1の大ヒットを記録しました。
 1979~1980年というのは、個人的には、僕が本格的に音楽に目覚めた特別な時期であり、時代的にも新しく刺激的な音楽が色とりどりに咲き乱れていた、本当に面白い時代でした。そして僕にとって、そんな時代を象徴する忘れられない曲が、先にお送りした「ポップ・ミューヂック」と「ラジオ・スターの悲劇」、そして、この「ファンキータウン」です。
 3曲をこうして並べてみて、電子音楽という共通のキーワード以上に、どれも印象的な女性コーラスが曲の魅力を決定付けていることに、あらためて気がつきました。個人的な趣味もあるかと思いますが、女性の歌声には、どうしてこうも抗うことの出来ない不思議な魅力(魔力?)があるのでしょうか?当時も今も、聴くたびに頭も心もクラクラしてしまいます。

―5曲目―

 当時ラジオでよく耳にしたお気に入りの曲がありました。中毒性の高いファンキーなフレーズ、途中に出てくるヘリウムガスを吸ったような声(分かりやすく言うと「ドリフの早口ことば」における志村けんさんの声)など、断片的な記憶はあるけれど、困ったことに肝心のアーティスト名や曲名がうろ覚えで分からないのです。
こういうことはたまにあるのですが、特にこの曲は、正体が分からずモヤモヤしていた期間がとてつもなく長かった(ウン十年……)ので、手に入れたときの喜びもひとしおでした。聴いてください。

 この曲は、1980年に発表された米テキサス州ダラス出身の男女デュオ、ヤーブロー&ピープルズのファースト・アルバム「ドント・ストップ・ザ・ミュージック(原題:”The Two Of Us”)」に収録されている、ディスコ・クラシックとして名高い曲です。
 ときは21世紀、一般家庭にもパソコンやインターネットが普及したお陰で、ようやく誰の何という曲か、ネット検索で突き止めることが出来ました……が、新たな問題が発生。いざ音源を手に入れようと思ったら、アルバムは入手困難な状態で、80年代のディスコ・ソングや懐かしの洋楽を集めたコンピレーション盤でしか音源が手に入らない状況でした。オリジナル・アルバムにこだわっていた当時の僕は、コンピレーション・アルバムの類に手を出すことを良しと出来ず、困り果ててしまいました。
その後、2015年にヤーブロー&ピープルズのアルバムがめでたく再発されることになりました。最近は、油断しているとアッという間に生産中止とか廃盤になってしまうので、また手に入らなくなる前に速攻で買ったのは、言うまでもありません。

―6曲目―

 当時、一大ブームを巻き起こしていたキャンディ・ポップと呼ばれるムーヴメントがありました。言葉のイメージ通り、主に若くて溌剌としたガールズ・グループが、明るくポップで弾けるような曲を歌う、というのが王道パターンでしたが、このグループはちょっと毛色が違いました。囁き声を絡めた色っぽい歌声に、中学生の僕はドキドキでした。聴いてください。

 ドゥーリーズはイギリスのポップ・コーラス・グループで、この曲は1979年に発表されたドゥーリーズ3枚目のシングルです。
 同時期に人気のあったノーランズやアラベスクと比べると、中学生の僕にとっては、女性メンバーの見た目がちょっとオバさんっぽくて残念だったのですが、その分、大人の色っぽさ(あくまでも当時の中学生が想像する可愛いレベルの色っぽさですが……)が感じられるドゥーリーズの曲は大好きでした。特にこの囁き度マックスの「ボディ・ランゲージ」は、忘れられない1曲です。

―7曲目―

 まだインストゥルメンタル曲にちゃんと免疫が出来ていなかった頃に、夢中になれた数少ない曲のひとつです。伸びやかなギター・フレーズが心地良い素敵な曲です。聴いてください。

 この曲は、日本において3大ロック・ギタリストの一人とされている英国のギタリスト ジェフ・ベックが、1980年に発表したアルバム「ゼア・アンド・バック」に収録されています。3分にも満たない短い曲ですが、絶品のメロディを堪能できる隠れた名曲です。
 僕はギターを弾かないのですが(Fのコードで挫折したクチです……)、ジェフ・ベックを聴いていると、こんな風にギターを弾くことが出来たらきっと気持ちいいだろうなぁ、と憧れてしまいます。
 この 「ゼア・アンド・バック」は、僕が初めて買ったジェフ・ベックのアルバムです。
アルバム・ジャケットがとても印象的で、黒地にアーティスト名とアルバム・タイトル(表に”JEFF BECK”、裏に”THERE & BACK”)が白く(少しクリーム色っぽい)大きなセリフ体のステンシルフォントで印刷されているだけのシンプルで潔いデザインの美しさ、そして、ギターケース等の皮革部分に見られる凸凹模様が表面にエンボス加工(贅沢!)で施されている、そんな、一見地味に見えるけれども素敵なジャケットでした。

―8曲目―

 まずは、このバンドの見た目のインパクト、そのカッコ良さにすっかりやられてしまいました。そして、実際に曲を聴いたときの衝撃もなかなか強烈なものがありました。ドコドコ打ち鳴らされる原始的なリズム、いわゆるジャングル・ビートと言われる民族音楽のリズムを取り入れた、それまで聴いたことのない新しい音楽にワクワクしました。聴いてください。

 これは、イギリスのニューウェーブ/ポストパンク・バンド アダム&ジ・アンツが1980年に発表したセカンド・アルバム「アダムの王国(原題:”Kings Of The Wild Frontier”)」に収録されている、アルバム・タイトル曲です。面白いのは、原題は同じなのに、なぜか邦題ではアルバムのタイトルと曲のタイトルが違うのです。ちなみに、最近まで「アダムの王国」がデビュー・アルバムだとずっと思っていました。お恥ずかしい限りです……。
 当時、アダム&ジ・アンツのレコードは結局買わずじまいでした。中高生のお小遣いでは買えるレコードも限られるので、どうしても優先的に買うのはハード・ロック系となり、当時気になっていたけど買えなかったレコードが山ほどありました。その後、社会人となった僕は、ある時を境に、当時買いたくても買えなかったレコード(その頃は既にメディアがCDに変わっていましたが……)を、まるで親の仇でも取るように買いまくりました。この話は、また別の機会に。

―9曲目―

 雑誌等でその存在を知り、ずっと気になっていたアメリカのバンドがいました。初めて彼らのアルバムを買ったのは、ラジオで聴いてとても気に入ったこの曲が目当てでした。聴いてください。

 これは、1977年に発表されたセカンド・アルバム「蒼ざめたハイウェイ(原題:「In Color」)」に収録されていて、シングル・カットもされた彼らの代表曲の一つです。
 この曲を初めてラジオで聴いたとき、まず学校のチャイムを模したイントロに不意を突かれ、すかさず始まるハードでグイグイ突き進んでいく曲の勢いとカッコ良さにしびれ、頭にこびりついて離れないキャッチーで印象的なサビにノックアウトされました。
 アルバムはとても気に入ったのですが、当時、既に5枚のアルバムを発表していたチープ・トリックをそれ以上追いかけることは、財政上の都合で出来ませんでした……悲しい。
本格的にチープ・トリックにのめり込むのは、もうしばらく後のことになります。

―10曲目―

 またもやラジオ番組「百万人の英語」の登場です。講師の小林克也さんがこの番組で取り上げたことがキッカケで、多くの曲やバンド/ミュージシャンを知ることが出来ました。これも、「百万人の英語」で出会った思い出の1曲です。聴いてください。

 これは、1980年に発表された「ザ・リバー」という当時アナログ2枚組という大作アルバムからのシングルで、ブルース・スプリングスティーンにとって初の全米トップ10入りという大ヒットを記録しました。
 「ハングリー・ハート」は、初めて聴いたときから大好きな曲でしたが、かといって、アルバムを買うわけでもなく(さすがに2枚組はハードルが高い……)、ブルース・スプリングスティーンにはまることもありませんでした。また、ラジオで聴いた「明日への暴走(原題:”Born To Run”)」という曲のカッコ良さには胸が熱くなり、レンタルレコード店で同名アルバムを借りて聴いてみたのですが、当時は全体的に今ひとつピンと来なかったのです。
 そんな僕が本格的にブルース・スプリングスティーンにハマったのは40歳を過ぎてからのこと。最初の出会いから四半世紀以上も経っていましたが、これが僕のタイミングだったのでしょう。

* * *

-今回も最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第8回「中学時代 ~番外編~」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
199
99
TOTO
Toto
2ポップ・ミューヂック
Pop Muzik
M
M
3アップサイド・ダウン
Upside Down
ダイアナ・ロス
Diana Ross
4ファンキータウン
Funkytown
リップス・インク
Lipps, Inc.
5ドント・ストップ・ザ・ミュージック
Don’t Stop The Music
ヤーブロー&ピープルズ
Yarbrough & Peoples
6ボディ・ランゲージ
Body Language
ザ・ドゥーリーズ
The Dooleys
7トゥ・マッチ・トゥ・ルーズ
Too Much To Lose
ジェフ・ベック
Jeff Beck
8略奪の凱歌
Kings Of The Wild Frontier
アダム&ジ・アンツ
Adam & The Ants
9今夜は帰さない
Clock Strikes Ten
チープ・トリック
Cheap Trick
10ハングリー・ハート
Hungry Heart
ブルース・スプリングスティーン
Bruce Springsteen

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