第6回「晩夏」<特番>


 皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。

 早いもので、8月も終わり、今日から9月に突入しました。とは言え、残暑と言うには程遠く、まだまだ暑い日が続くようです。
 それにしても、子供の頃も、大人になってからも、夏の終わりというのは、どうしてこんなにも切ない気持ちになるのか……なんてことをつい考えてしまうこの時期に、過ぎゆく夏を惜しみつつ、サマー・スペシャル<番外編>として、おセンチ気分に良く似合う夏の曲を特集したいと思います。
タイトルに「夏/サマー/SUMMER」という言葉を含む曲、という縛りはそのままに、洋楽・邦楽を問わず、僕のお気に入りを10曲ピックアップしました。

 今回も10曲全部を一気にお送りしますので、早速いってみましょう。

ー1曲目ー

 まずは、夏の終わりの気だるい気分にピッタリなこの曲から。聴いてください。

 ザ・ジャム解散後のポール・ウェラーと元デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのミック・タルボットが結成したユニット、スタイル・カウンシルが1983年に発表したシングル曲です……と知った風なことを言っていますが、実のところ、僕はスタイル・カウンシルをリアルタイムではちゃんと聴いたことがありませんでした。
 当時、ねじ曲がった高校生の僕は、巷で流行っている音楽や、お洒落な音楽を「軟弱」と断じて、意図的に避けていました。とは言え、密かに気になっているバンドやミュージシャンもいて、後々あらためて聴いてみたら見事にはまってしまった、なんてこともよくありました。スタイル・カウンシルなどはその際たるもので、いま思えば、へんな意地を張って勿体ないことをしたな、と思います。
 この曲を聴いていると、何ともやるせない感じが伝わってきて、もうこのまま何もしないでいたい……そんな気分になってきます。

-2曲目-

 続いては、ひと夏の恋の終りの切なさが胸に沁みる曲です。聴いてください。

 1978年に発表された大ヒットアルバム「スーパースターはブロンドがお好き」からお送りしました。
 歌詞にジャマイカとかカーニバルという言葉が出てくる通り、トロピカル・ムードのアレンジが心地よい、夏の終わり、そして恋の終わりによく似合う小粋な曲です。
 突然姿を消してしまった彼女、ひと夏の恋が終わり、どこにも愛が見当たらないと嘆きつつ、新しい恋は来年までお預け…なんてことを性懲りもなく言う男。こういう歌を、ロッド・スチュワートのあのハスキーな声で歌われると、たまらないものがあります。

ー3曲目ー

 さて、次にお送りするのは、僕が大学に入った年に大ヒットした曲で、ノスタルジックな雰囲気に胸がギュッと締め付けられます。聴いてください。

 この曲は、1984年に発表されたイーグルス(当時は解散状態)のドン・ヘンリー2作目のソロ・アルバム「ビルディング・ザ・パーフェクト・ビースト」からのファースト・シングルで、彼のソロ・キャリアにおける最大のヒット曲です。
 これは、初めて聴いた時にグッと心を掴まれて以来、ずっと大好きな曲です。
当時は、ドン・ヘンリーが何者かピンと来なかったのですが、後で、イーグルスでドラムを叩きながら「ホテル・カリフォルニア」を歌っている人だと分かり、なぜか合点がいきました。
 この曲は、メロディも最高だし、時代を感じさせるアレンジがより一層ノスタルジックな気分にさせてくれますが、何と言っても一番の魅力は、やはりドン・ヘンリーのあの歌声ですね。少しハスキーな優しい歌声の奥に、大人になりきれない少年の無垢な危うさと、それでも大人の男として酸いも甘いも経験してしまった、それゆえの哀愁を感じてしまいます。

ー4曲目ー

 次は、静かに訪れる夏の終わりを感じさせる曲です。聴いてください。

 これは、1981年に発表されたシーナ・イーストンのデビュー・アルバム「モダン・ガール」のラストを飾る曲です。淡々とした曲調が、夏の終りの寂しさをより強く印象付けます。
 すぐにシーナ・イーストンだと分かる、透き通った伸びのある歌声に、つい聞き入ってしまいます。

-5曲目-

 さて、お次は、とけてほしくない夏の魔法のように、とびきりのメロディーが心の琴線に触れまくる、そんな素敵な曲です。聴いてください。

 1995年に発表されたデビュー・アルバム「ベン・フォールズ・ファイヴ」からお送りしました。
 このアルバムとの出会いは、本当に衝撃的でした。とにかく曲の良さが半端ありません。
めちゃくちゃポップなのに品の良さが滲み出るメロディ、打楽器の本領発揮とばかりに弾けまくるピアノ、ギターレスのスリー・ピース・バンドという個性的な形態といい、型にはまらない自由な姿勢にはパンク精神を感じます。
そして、何とも憎たらしいことに、どんなに暴れまくっている曲でも、なぜか最後には不思議と泣かされてしまうのです。

-6曲目-

 次の曲は、ファンク調のクールな感じで始まりますが、ラストに向けて、どうにもならない狂おしい感情が止めどなく溢れ出し、どこまでも昇りつめていくような感じの展開にソクゾクしてしまいます。聴いてください。

 サマー・スペシャル二度目の登場となるプリンセス プリンセス(どれだけ好きなんだ……)が、1991年に発表した6作目のアルバム「DOLLS IN ACTION」からお送りしました。このアルバムの中でも、特にお気に入りの曲で、個人的にどうしても紹介したかったのです。
 この曲を聴くたび、胸をかき乱されるような、それでいて心地よい痛みにも似た感覚を覚えます。

ー7曲目ー

 次にお送りする曲は、「夏」のことを歌っているわけではなく、ある夏の日に、人生について巡らせた思いを綴っています。聴いてください。

 1976年に発表した4作目のアルバム「ニューヨーク物語」からお送りしました。
内省的な歌詞、抑えの効いた曲調……、と、まったく派手さはありませんが、ビリー・ジョエルならではの美しく流れるようなピアノの旋律が心に残る、印象的な曲です。

-8曲目-

 お次の曲は、アコースティック・ギターでしっとりと……。聴いてください。

 2006年に発表された4作目のアルバム「ドゥエラー・オン・ザ・スレショールド」からお送りしました。アコースティック・ギターによる抑制の効いた曲調が、夏が過ぎ去った後のもの悲しさをより深く感じさせます。
 トライブ・オブ・ジプシーズは、1996年にデビューしたラテン系ハード・ロック・バンドです。サンタナなどのラテン・ロックも元々好きだったので、このバンドも一発で好きになりました。リーダーのメキシコ系アメリカ人ギタリスト、ロイ・Zは、ブルース・ディッキンソンやジューダス・プリーストのプロデューサーとしても活躍しています。

-9曲目-

 次にお送りするのは、夏の終わりにピッタリの曲です。聴いてください。

 2010年に発表された、再結成後3作目となるアルバム「ダンシング・バックワード・イン・ハイ・ヒールズ」からお送りしました。
 かつてのニューヨーク・ドールズが70年代に振り撒いていた、ケバくて、毒々しくて、妖しいイメージからはかけ離れていますが、レゲエ調のリズムに乗せた、気だるく、トロピカルな雰囲気が、見事にニューヨーク・ドールズにハマっていて、すっかり病みつきになってしまいました。

-10曲目-

 あっという間に、最後の曲となってしまいました。夏に終わった恋の歌です。聴いてください。

 1971年に発表された13作目のアルバム「青春の軌跡」からお送りしました。
このとき、スティーヴィー・ワンダーはまだ20歳。翌年には傑作「心の詩」を発表、そして同年に大傑作「トーキング・ブック」を発表します。そして、これを皮切りに、奇跡的な傑作を立て続けに発表、もはや神がかったとしか言いようのない時代に突入します。
 スティーヴィー・ワンダーは、才能が大爆発(ビッグバン)を起こしてからの活躍があまりにも驚異的なため、それ以前の印象が薄れがちですが、12歳でモータウンからリトル・スティーヴィー・ワンダーとしてデビューした当時から、常人ではなし得ないほどの素晴らしい作品を数多く生み出しています。
この曲は、そんな類稀なる才能がビッグバンを迎える直前に生み出した、まっすぐ心に沁みてくる美しい曲です。

* * *

 今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回からは、またしばらく僕の音楽遍歴を辿っていこうと思っています。もしかしたら、途中で思いついた特番を急にお送りすることがあるかもしれません。予定は未定ですが、お楽しみに。

 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第6回「晩夏」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
1ロング・ホット・サマー
Long Hot Summer
スタイル・カウンシル
The Style Council
2ラスト・サマー
Last Summer
ロッド・スチュワート
Rod Stewart
3ボーイズ・オブ・サマー
Boys Of Summer
ドン・ヘンリー
Don Henley
4夏の終りに
Summer’s Over
シーナ・イーストン
Sheena Easton
5ホェアーズ・サマーB?
Where’s Summer B?
ベン・フォールズ・ファイヴ
Ben Folds Five
6SUMMER MADNESS
Summer Madness
プリンセス・プリンセス
Princess Princess
7夏、ハイランドフォールズにて
Summer, Highland Falls
ビリー・ジョエル
Billy Joel
8アフター・ザ・サマー
After The Summer
トライブ・オブ・ジプシーズ
Tribe Of Gypsies
9エンド・オブ・ザ・サマー
End Of The Summer
ニューヨーク・ドールズ
New York Dolls
10夏に消えた恋
Never Dreamed You’d Leave In Summer
スティーヴィー・ワンダー
Stevie Wonder

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