第7回「邦楽」<2/2>


―6曲目―

 振り返ってみると、小さい頃から僕が憧れる日本の歌手/ミュージシャンは、どこか妖しげで危険なロックの香りがする人ばかり……そんなことに、大きくなってからあらためて気が付きました。
中2で洋楽ロックに目覚めるずっと前、すでに幼少期からその兆しは現れていたんですね。いずれ僕がロックに憑りつかれるのは宿命だったということでしょう。
そんな僕にとって、小さい頃から憧れだったこの人は、極めつけともいえる大きな存在です。聴いてください。

 この曲は、1980年1月1日、80年代の幕開けと同時に発表された沢田研二さんの29枚目(!)のシングルです。前年11月に発表されたアルバム「TOKIO」からシングル・カットされた、新しい時代の到来を象徴するセンセーショナルな曲でした。また、コピーライターという職業が花形として脚光を浴び始めたこの時代に、当時まだ若手コピーライターだった糸井重里さんが作詞を担当したことでも話題になっていました。
 僕は、小学生の頃から沢田研二さんのことが大好きで、覚えている限りでは、最初に夢中になった曲は「危険なふたり」。これは1973年に発表された、僕がまだ7歳のときの曲なので、出会ったのは間違いなく「8時だヨ!全員集合」ですね。
 新曲を発表するたびに、それまでのイメージを打ち破る新たな世界観を打ち出し、常に変化し続けることで、いつも僕らを驚かせて、楽しませてくれた沢田研二さん。当時の日本の歌手で、これほどまでに自由で、過激で、センセーショナルでありつつ、とてもポップで、エンターテインメント性に溢れ、何をやってもサマになってしまう、こんなにもロックな存在はちょっといなかったと思います。子供の頃の僕のヒーローです。

―7曲目―

 70年代終盤、YMOの大ヒットに導かれるように、テクノ・ポップ/ニュー・ウェイヴと呼ばれる新しい音楽スタイルのバンドが次々と誕生しました。その中で、僕のお気に入りだったバンドは、その主要メンバーが、生粋のミュージシャンではなく、イラストレーター、ファッション・スタイリスト、グラフィック・デザイナーといった、時代の先端をいく憧れの仕事に携わっている人達でした。聴いてください。

 この曲は、1980年に発表された彼らのデビュー・アルバム「WELCOME PLASTICS」に収録されています。当時は知らなかったのですが、元々この曲は、アルバムに先駆けて、彼らのデビュー・シングルとして、1979年にイギリスのラフ・トレード・レーベルからリリースされていました。
 プラスチックスは、音楽性はもちろんのこと、バンド名、ジャケット・デザイン、メンバーのヴィジュアルやファッションなど、全てをひっくるめた、ポップで、クールで、スタイリッシュで、アヴァンギャルドなトータル・イメージ、その何とも自由で軽やかな感じに心をくすぐられました。

―8曲目―

 新しい音楽との出会いは、いつも気持ちをワクワクさせてくれます。
 1980年、見た目のインパクトも抜群な、小粋でいかしたグループがデビューして話題になりました。当時、まだあまり知られていなかったスタイルの音楽を、日本中に一気に広めた立役者でもあります。聴いてください。

 この曲は、1980年に発表された彼らのデビュー・シングルです。この後も、「トゥナイト」「街角トワイライト」「ハリケーン」と、ご機嫌な曲を立て続けに発表して、僕らを夢中にさせてくれました。
 ソウル、リズム&ブルースなどの黒人音楽に対する溢れんばかりの愛情、憧れの黒人音楽に近づくためにフロントの4人が顔を黒く塗ったインパクト抜群のヴィジュアル、10人編成という大所帯グループによる豪華なイメージ、そして個人的なお気に入りのツボであるトランペッター桑野さんの存在が、シャネルズというグループを強烈に印象付けました。
 シャネルズのおかげで初めて知った「ドゥーワップ」という音楽スタイル、また「ドゥーワップ」に限らず、ブラック・ミュージックそのものに興味を持つきっかけという意味でも、シャネルズの影響は大きいものがありました。 

―9曲目―

 1980年、あるアイドル歌手がデビューしました。
たしかにルックスも可愛らしかったのですが、何よりも、それまでのアイドルとはちょっと次元の違う曲のクオリティにすっかり夢中になり、僕は生まれて初めて、いわゆるアイドルと呼ばれる女性歌手のアルバムを買ったのでした。
 今でも大好きなそのアルバムから、特にお気に入りの曲をお送りします。聴いてください。

 この曲は、1980年に発表された松田聖子さんのデビュー・アルバム「SQUALL」のタイトル曲です。
この「SQUALL」というアルバムは、日本におけるAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の名盤としても評価が高く、いわゆるアイドル路線とは完全に一線を画した、音楽的なクオリティに拘った素晴らしい作品です。このアルバムに収録されている、デビュー曲の「裸足の季節」や永遠の名曲「青い珊瑚礁」はもちろん大好きですが、この「SQUALL」という曲は、僕の胸を一番熱くさせてくれるのです。
 当時、清水市内の桜橋というところにあった地元の有名なレコード店「すみや」まで自転車を飛ばして、このアルバムを買いに行ったのを今でも覚えています。そして、そのときに見た、日が傾き空がオレンジ色に染まり始めた夕方の景色が、なぜか今でも頭に浮かぶのです。

―10曲目―

 僕が中学3年生のとき、ある伝説的なTVドラマの第二シリーズが放映されました。そのシリーズの中でも、今だに語り継がれる忘れられない名シーン、そして、そのバックに流れていた曲の衝撃は、とても言葉では言い表せません。聴いてください。

 この曲は、1978年発表のアルバム「愛していると云ってくれ」に収録されています。
そして、もうお分かりかもしれませんが、その伝説のドラマというのは「3年B組金八先生」です。その第二シリーズが放送された1980年は、僕自身がドンピシャで中学3年生だったこともあり、このシリーズは僕の記憶に強烈に焼きついています。特に、立てこもっていた放送室から出てきた加藤優たちを、なだれ込んできた警察が取り押さえるシーンは、僕らにとてつもなく大きなインパクトを残しました。すべての音が消え失せ、スローモーションでそのシーンが流れていく。バックには厳かに「世情」が鳴り始め、そして、加藤優たちを乗せた護送車が走り去っていく場面で、男性コーラスが「シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく……」と荘厳に歌いあげる瞬間、全身に震えが走り、言葉を失ったまま、呆然と画面を見つめていました。あの場面は忘れられません。

 ところで、全くの余談ですが、ドラマに出てくる「スナックZ」の壁に、オレンジ色のキッスのポスターが貼ってあり、いつも気になっていました。だから何だというわけではないのですが、どうしても一言触れておきたくて……。

* * *

-今回も最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第7回「邦楽」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
1吸殻の風景
Suigara No Fukei
さだまさし
Masashi Sada
2てぃーんず ぶるーす
Teens’ Blues
原田真二
Shinji Harada
3みずいろの雨
Mizuiro No Ame
八神純子
Junko Yagami
4銀河鉄道999
The Galaxy Express 999
ゴダイゴ
Godiego
5思い過ごしも恋のうち
Omoisugoshi Mo Koinouchi
サザンオールスターズ
Southern All Stars
6TOKIO
TOKIO
沢田研二
Kenji Sawada
7コピー
Copy
プラスチックス
Plastics
8ランナウェイ
Runaway
シャネルズ
The Chanels
9SQUALL
SQUALL
松田聖子
Seiko Matsuda
10世情
Sejo
中島みゆき
Miyuki Nakajima

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