Rockin’

雑誌「rockin’ on」の創刊者であり、音楽評論家・編集者・DJとして多方面で活躍されていた渋谷陽一さんが、7月14日に旅立たれた。
中2でロックに目覚めた僕にとって、当時、渋谷陽一さんがNHK-FMでやっていた「サウンドストリート」というラジオ番組は、ロックに関する貴重な情報源であり、数多くのロック・バンド/ミュージシャンに出会わせてくれた、忘れることの出来ない番組だ。
しかし、それ以上に忘れられないのは、僕が洋楽ロックにのめり込むきっかけとなったキッスとの出逢いを生み出してくれた渋谷陽一さんの言葉だ。
小学生のとき、キッスのシングル「ラブガン」を親に買ってもらったけれども、ロックへの目覚めには、まだ時期が早すぎた。そして、中2のとき、イエロー・マジック・オーケストラをきっかけに音楽を本格的に聴き始めた僕は、ある日、発売されたばかりの高橋幸宏さんのソロ・アルバム「音楽殺人」を買いに、地元、次郎長通り商店街のレコード屋さんに自転車を走らせた。そして、そこでは僕の運命を大きく変える出逢いが待っていました。
たまたま目にしたキッスのレコードを、「そういえば、家にキッスのシングルがあったなぁ……」とか思いながら、1枚1枚引っ張り出して眺めていたとき、あるアルバムの帯に書かれていた言葉に僕の目は釘付けになりました。
「これまでのキッスのサウンズが国産の2000クラスのスポーツ・カーとするなら、このアルバムのキッス・サウンズは最高速度280キロ以上のランボルギーニ・クラスの大迫力で、まさに超重量級大戦車軍団といった感じである。 <解説>渋谷陽一」
(「地獄の軍団(原題:Destroyer)/キッス」国内盤レコード<VIP-6395>のライナーノーツおよび帯より引用)
この言葉に衝き動かされた僕は、お目当てだった「音楽殺人」を差し置いて、そのとき手にしていたキッスのアルバム「地獄の軍団」をレジに持っていきました。そして、このレコードに大きな衝撃を受けた僕は、その日からすっかりキッスの虜(とりこ)となり、ロックの底なし沼へと足を踏み入れることになったのです。
もし、渋谷陽一さんのこの言葉がなかったら、現在の僕はいなかったと思います。
渋谷陽一さん、この素晴らしいロックの世界に僕を招き入れてくれて、本当にありがとうございました。
それにしても、誕生日が6月9日(ロックの日)なんてカッコ良すぎです……。
心よりご冥福をお祈りいたします。
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