第1回「目覚め」<2/3>


―3曲目―

 あれは多分、僕が中学1年生の時だったと思います。TVのコマーシャルで流れていた曲に耳を奪われ、その曲のことが頭から離れなくなってしまいました。そのCMが流れるたびに「いい曲だなあ……」と聴き惚れていたのですが、誰の何という曲なのか分かりません。当時はインターネットなど無く、こうした曲を探し当てるのも容易ではありません。

 ずっとその曲のことが忘れられずにいたある日、レコード屋さんで、ジャケットに「NESTLE(ネッスル)チョコホット TV-CF使用曲」と書かれたシングル盤が目に留まりました。そうです。ついに「その曲」を見つけました。聴いて下さい。

 いつ、何度聴いても、胸に沁みる素晴らしい曲です。本国アメリカでもスマッシュ・ヒット(全米チャート最高位:24位)を記録していますが、ここ日本では、オリコンチャート最高位:12位という記録以上に、本国を凌ぐほどの圧倒的な愛され方をしている曲です。

 同じバラードでも、よくある売れ線狙いの大仰なバラードとは違い、抑えの効いた美しいメロディ、伸びやかで張りのある力強い歌声、ツアーを共にするバンドのタイトな演奏、内省的な歌詞に寄り添うようなピアノ主体のシンプルで端正なアレンジ、と、すべてが完璧に揃った、色褪せることのない文句なしの名曲です。

 余談ですが、サビの歌詞で韻を踏んでいる”word”と”heard”という言葉、この部分の声の響きに憧れて、一所懸命ビリーを真似ながら、発音の練習をしたことを思い出します。

―4曲目―

 小学校高学年の頃、毎晩、布団の中でラジオを聴くのが楽しみでした。「8時を過ぎたら子供は寝なさい」と言われていたので、仕方なく布団に潜り込むけれど、まだ眠くもない僕にとって、ラジオは最高の夜の友達でした。

 僕が中2の時、相変わらず夜中にラジオを聞いていると、突然、それまで聴いたことのない、不穏な空気を漂わせる歪んだギターの音が、夜の暗い部屋にラジオから流れ出してきました。「一体、これは何だ⁉」と、胸がざわつきはじめました。その衝撃的なカッコいいリフに、僕の心は一瞬にして鷲掴みにされました。ロックに目覚めたばかりの僕を、イントロのリフ一発でノックアウトした曲です。聴いてください。

 これは、ハードロックの範疇にとどまらず、数えきれないほど多くのバンドやミュージシャンがカバーしている、ロックの古典(クラシック)たる名曲です。

 このとき、僕がラジオで聴いたのは、地元の「すみや」というレコード店が流していた、ディープ・パープルのベスト・アルバム「ディーペスト・パープル」の発売告知CMで、それに「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロが使われていたのです。

 当時の僕は、限られたお小遣いでキッスのアルバムを少しずつ買い揃えていたのですが、この非常事態に際し、急遽、計画を変更して「ディーペスト・パープル」を手に入れました。これがまた、内容の充実度合いが半端なく、すっかり夢中になり、毎日聴きまくっていました。

 ディープ・パープルについては、いずれコラムでも取り上げたいと思っています。

―5曲目―

 僕が中2の頃、もともと日本では絶大な人気を誇っていたあるバンドが、遂に全米No.1に輝きました。そんな特大ヒットのお陰で、影がうすくなってしまった感はありますが、この曲をラジオで初めて聴いた時の鮮烈な印象がいまだに忘れられません。聴いてください。

 クイーンは、アルバム「ザ・ゲーム」の発売に先駆けて、この「プレイ・ザ・ゲーム」の前に、既に「愛という名の欲望」、「セイブ・ミー」と、2枚のシングルを出していました。「愛という名の欲望」は全米No.1を獲得。さらに、「プレイ・ザ・ゲーム」に続くシングル「地獄へ道づれ」も全米No.1に輝き、この時期のクイーンの勢いはとどまるところを知りませんでした。

 この一連のシングルを見ても分かるように、ロカビリーからディスコまで、とても同じバンドとは思えないほどヴァラエティに富んでいながら、どれもがクイーン以外の何者でもない曲になっているところが、驚異的であると同時に、たまらなく魅力的です。
そんなクイーンの曲の中で、この「プレイ・ザ・ゲーム」は決して突出した特徴のある曲ではないのですが、クイーンの様々な魅力がコンパクトな形に凝縮された、見事なほどにクイーンらしい1曲だと思います。

―6曲目―

 中学生の時によく読んでいた雑誌に、話題の海外ミュージシャンを紹介する特集記事があり、そこに載っていたあるバンドの妖しくも美しい写真に、僕の目は釘付けになりました。聴いてください。

 アルバム「クワイエット・ライフ」のB面1曲目、CDでは5曲目の「ハロウィーン」をお送りしました。タイトル・トラックであり、シングルにもなった「クワイエット・ライフ」も大好きですが(ちなみに、日本盤シングルのB面が「ハロウィーン」でした……)、アタマのドラム・フィルから雪崩れ込むようにして始まるこの曲は、テンポの速さとは別の次元での疾走感、曲全体を霧のように包み込む妖しいキーボードの響き、曲の品格を印象付ける滑らかで落ち着いた音色のサックス……と、ジャパンの美意識がたまらなくカッコいい形で結集している、そんなお気に入りの1曲です。

<つづく>