第5回「HR/HM」<2/2>


―6曲目―

 次にお送りするのは、デビューにキッスが絡んでいたという話を聞いて、ずっと気になっていたアメリカ西海岸のバンドです。当時、既に4枚のアルバムを出していましたが、まずは、誰もが「最高傑作」「歴史的名盤」と口を揃えて絶賛する彼らのデビュー・アルバムを手に入れました。これは、本当にすごいアルバムでした。聴いてください。

 1978年に発表された記念すべきデビュー・アルバム「炎の導火線(原題:”Van Halen”)」の冒頭を飾る曲です。
 クラクションの音に導かれ、野太いベースが地を這い、ギラギラと眩い光を放ちながらギターが炸裂し、野性的なヴォーカルが自由奔放に暴れ出し……中でも印象的だったのは、それまで聴いたことの無いような、パコーンと突き抜けるように鳴り響くスネア・ドラムの音です。とにかく、スピーカーから飛び出してくる音のすべてが、エネルギーに満ち溢れ、破天荒で痛快なものでした。
忘れてならないのは、メロディを際立たせる印象的なハイ・トーン・コーラスです。ヴァン・ヘイレンの曲に欠かせない、第二のヴォーカルとも言うべき圧倒的存在感のコーラスですが、これを歌っているのがベースのマイケル・アンソニーだと知った時は驚きました。見た目のイメージから、てっきりエディが歌っているものと思い込んでいたのです……。
 あとは何だかんだ言っても、このアルバムの最大の魅力は抜群の曲の良さです。無駄のないコンパクトな曲の中に、魅力的なフレーズが満載で、今でも聴く度にドキドキ・ワクワクさせてくれる最高のアルバムです。

―7曲目―

 血気盛んな中高生の頃は、とにかく「速い」「激しい」「うるさい」の3拍子揃った曲に目がありませんでした。そんな時にラジオで、とんでもなく、速く、激しく、うるさく、そしてカッコいい曲と出会いました。聴いてください。

 いつ聴いてもしびれます。これは、1980年に発表された4枚目のアルバム「エース・オブ・スペーズ」の冒頭を飾るタイトル曲で、モーターヘッドを代表する爆走ナンバーです。
 実は当時、「エース・オブ・スペーズ」のカッコ良さにノックアウトされながらも、他に欲しいレコードや気になるバンドがありすぎて、残念なことにモーターヘッドのレコードまで手が回りませんでした。そんなわけで、モーターヘッドをはじめとする男臭い爆音・暴走系のロックンロールに本格的にのめり込むのは、僕が社会人になり、後追いでパンクの洗礼を受けてからのことです。

―8曲目―

 次にお送りするのは、英語圏以外からのバンドです。ドイツ出身で、世界的な成功を収めたハード・ロック・バンドといえば……。聴いてください。

 1982年に発表した8枚目のアルバム「ブラックアウト」の、アナログでいうA面ラストに収録されている曲です。整合感のある名曲が並ぶ中、かなり好き放題に暴れまくっています。これを名曲と言うかどうかは別として、好きにならずにはいられません。
 スコーピオンズは、数々の発禁ジャケット騒動でも有名で、また、幾つかのジャケット・デザインをクリエイター集団「ヒプノシス」が手掛けている点でも、興味をそそられるバンドでした。
肝心の音の方ですが、メジャーになり切れない、その愛すべきマイナーさがとても魅力的なバンドでしたが、本格的な全米進出に伴い、王道とも言える堂々としたハード・ロックを鳴らすようになりました。この「ブラックアウト」は、そんな黄金時代の幕開けを飾る、彼らの傑作アルバムのひとつです。

 余談ですが、スコーピオンズは、僕が初めて日本武道館でライブを観たバンドという意味でも、非常に思い出深いバンドです。

―9曲目―

 次にお送りするのは、アイルランド出身のカリスマ的ベーシストが率いた、「アイルランドの英雄」と呼ばれる国民的人気バンドです。聴いてください。

 1981年に発表された11作目のアルバム「反逆者」からお送りしました。
 シン・リジィは、激しさの中に、アイルランド音楽の伝統的要素が息づいた、人懐っこくも哀愁を感じさせる独自の音楽性で、アイルランド国内はもとより世界的にも人気を博しました。ツイン・リード・ギターが奏でる美しいメロディーが心を震わせます。
 この時期のシン・リジィは、人気に翳りが見え始め、音楽的には方向性を見失ったなどと言われていました。実際、このアルバムのセールスも低調だったようですが、僕にとって、この「反逆者」というアルバムは、初めてシン・リジィと出会った忘れられないアルバムです。ジャケットもカッコいいし、何より、肝心の内容も、他のアルバムと比べればたしかに地味かもしれませんが、フィル・ライノットにしか生み出し得ない、粒よりの曲が揃っています。
今回お送りした「ハリウッド」も、シングルとしての派手さはありませんが、とてもかっこいい曲だと思います。特に曲の終わりに向けて増していく疾走感にはゾクゾクします。
 もともと、僕はシン・リジィに対して「大人っぽいハードロック」というイメージを抱いていたので、この「反逆者」というアルバムも、違和感なく受け入れることが出来たのかもしれません。
 結論。僕はこのアルバムが大好きなのです。

―10曲目―

 どのレコードを買うか迷ったときは、ジャケ買いに限ります。そのお陰で、僕はこれまでにいくつもの素晴らしいアルバムに出会うことが出来ました。
 今回、最後にお送りするのは、やはりジャケットに魅かれて手に入れたアルバムからの曲です。
ジャケットには、古城、血、髑髏、蜘蛛の巣……と、僕の好きなおどろおどろしい要素が満載です。同時に、ちょっと笑ってしまうようなB級感もたまりません(実際には、超A級のミュージシャンですが……)。そんな素敵なアルバムのタイトル曲、極めつけの1曲です。聴いてください。

 1980年に発表されたオジー・オズボーンのソロ2作目「ダイアリー・オブ・ア・マッドマン」のラストを荘厳に締め括る、圧倒的な1曲です。

 このアルバムでオジー・オズボーンと出会ったばかりの頃でした。学校帰りに立ち寄った本屋で音楽雑誌を立ち読みしていると、オジー・オズボーン・バンドのギタリスト、ランディ・ローズが飛行機事故で亡くなったことを伝える記事が目にとまりました。予期せぬ出来事に不意を突かれた僕は、しばらく呆然と立ち尽くしてしまいました。
「ダイアリー・オブ・ア・マッドマン」の驚異的な完成度にいたく感激して、「この先、どれだけすごい曲が生まれてくるのかな……」と、未来への期待しか無かったところに、それはあまりにも悲しい知らせでした。25歳はあまりにも若すぎます。

* * *

 最後にちょっとしんみりした話になってしまいましたが、今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第5回「HR/HM」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
1ネオンの騎士
Neon Knights
ブラック・サバス
Black Sabbath
2狂った夜
You Shook Me All Night Long
AC/DC
AC/DC
3ドント・ブレイク・マイ・ハート・アゲイン
Don’t Break My Heart Again
ホワイトスネイク
Whitesnake
4スポットライト・キッド
Spotlight Kid
レインボー
Rainbow
5アームド・アンド・レディ
Armed And Ready
マイケル・シェンカー・グループ
Michael Schenker Group
6悪魔のハイウェイ
Runnin’ With The Devil
ヴァン・ヘイレン
Van Halen
7エース・オブ・スペーズ
Ace Of Spades
モーターヘッド
Motorhead
8NOW!
Now!
スコーピオンズ
Scorpions
9ハリウッド
Hollywood (Down On Your Luck)
シン・リジィ
Thin Lizzy
10ダイアリー・オブ・ア・マッドマン
Diary Of A Madman
オジー・オズボーン
Ozzy Osbourne

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