第11回「ドラマー」

皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。
さて、今回はドラマー特集ということで、一般的にはあまり目立つことのない(?)ドラマーにスポットを当ててお送りしたいと思います。
僕は、音楽に目覚めた中学生の頃から、曲を聴いていると、なぜかドラムの音とかリズムが気になって仕方ありませんでした。その内、自分でも「ドラムを叩きたい」と思いはじめ、ドラマーに憧れを抱くようになりました。今では、念願叶って、趣味で大好きなドラムを叩いています。
というわけで、今回は、僕の大好きなドラマー達が叩いているお気に入りの曲を、バンド/ソロに関わらず紹介していきたいと思います。
ー1曲目ー
僕にとって、ドラマーといえば、まずはこの人。そして、僕が初めてドラムというものを強く意識したのは、このバンドのこの曲でした。聴いてください。
♪ キッス「ヒューリガン」<ドラム:ピーター・クリス>
“Hooligan” by Kiss <Drums: Peter Criss>
これは、1977年に発表されたキッスのシングル「ラブガン」のB面曲で、作曲もリード・ヴォーカルも、ドラマーのピーター・クリスによるものです。
僕にとって、この「ヒューリガン」という曲は、ドラムの魅力に目覚めるキッカケとなった忘れられない1曲なのです。もちろん、A面「ラブガン」のマシンガンのようなドラムのインパクトは強烈でしたが、こちらはもう、曲自体のカッコ良さが圧倒的すぎて、ドラムだけでは語ることが出来ません……。
この「ヒューリガン」のドラムは、至ってシンプルで、特に難しいことはやっていないのですが、3・4拍目で繰り返される「ドッ・タ・ドッ」のリズム、ツボに気持ち良くはまるフィルイン、絶妙なタイミングで炸裂するチャイナ・シンバル(だと思う)の音、そのすべてに胸がときめきました。
また、ずらりとタムを並べたピーター・クリスのドラム・セットは、まるで巨大な基地か要塞のようで、見た目のワクワクするようなカッコ良さも、ドラムに憧れた大きな理由の一つです。
ちなみに、当時ほとんど馴染みのなかったこの「ヒューリガン」(=不良、ごろつき)という言葉ですが、今ではサッカー人気と共に、「フーリガン」(こっちの方が本来の発音に近い)としてすっかり浸透しましたね。余談ですが……。
―2曲目―
ドラマーのソロ・アルバムといえば、普通はドラムが主役でガンガン叩きまくっている、そんな内容を期待しますよね。しかも、こんなカッコいい曲を先に聴いてしまったら、期待せずにはおれません。ところが……、この結末はのちほど。まずは聴いてください。
♪ ロジャー・テイラー 「レッツ・ゲット・クレイジー」
<ドラム: ロジャー・テイラー(クイーン)>
“Let’s Get Crazy” by Roger Taylor <Drums: Roger Taylor (Queen)>
この曲は、1981年に発表されたロジャー・テイラー初のソロ・アルバム「ファン・イン・スペース」に収録されている、最高にいかしたロックン・ロール・ナンバーで、アメリカ・日本ではシングル・カットもされています。
クールな雰囲気で始まり、徐々に熱を帯びて盛り上がっていく曲の展開がたまりません。そして、曲の途中に入る短いドラム・ソロのかっこ良さといい、ロックン・ローラー魂が炸裂するロジャーの熱いヴォーカルといい、文句のつけようがありません。
ラジオで聴いたこの曲にすっかり惚れ込んでしまった僕は、きっとアルバムもこういうご機嫌なロック・ナンバーが満載なんだろうな、と勝手に思い込み、期待に胸をパンパンに膨らませていたのですが、ようやく手に入れたアルバムを聴いて愕然としました。
3曲目に入っているこの「レッツ・ゲット・クレイジー」以外は、シンセサイザーを多用したニューウェイヴっぽい曲のオンパレード……。見事に期待を裏切られた僕は、そのショックからしばらく立ち直れませんでした。
今でこそ、アルバムを丸ごと通して楽しめるようになりましたが、当時の落胆ぶりといったら、それはもうひどいものでした。
話は変わりますが、ドラムの好みだけでクイーンの個人的ベスト・アルバムを選ぶとしたら、僕は迷わず「ジャズ」を挙げます。それまでのアルバムは、かっちり構築された重厚な感じのドラム・サウンドでしたが、このアルバムでは、いい意味で力が抜けたドライヴ感のある演奏を聴くことが出来、とても気持ちいいのです。どうして僕がこう感じるかというと、ロジャー・テイラーに惚れ込むキッカケとなった「ジャズ」ツアー時のライヴ映像があるのですが、その中で聴いたドラムの勢いとか音色に一番近いからかもしれません。
―3曲目―
この人を漢字一文字で表すとしたら、「漢(おとこ)」。濃いヒゲの剃り跡に割れたあご、男臭い精悍なルックス、ドラムを叩くときの凛々しく勇ましい姿、しびれるようなキメのアクション、抜群のインパクトを誇る左右対称のツーバス・セット、……すべてが惚れ惚れするほどカッコいい、永遠のドラム・ヒーローです。聴いてください。
♪ コージー・パウエル 「ザ・ブリスター」 <ドラム:コージー・パウエル>
“The Blister” by Cozy Powell <Drums: Cozy Powell>
これは、1981年に発表されたコージー・パウエル2作目のソロ・アルバム「サンダーストーム(原題:”Tilt”)」に収録されている曲で、コージー・パウエルのツーバスが炸裂するシャッフル系の高速チューンです。
モータースポーツが大好きなスピード・フリークのコージーらしく、レースシーンのSEに導かれて、一気にアクセル全開で走り始める怒涛の幕開けに、気分はいきなり爆上がりです。この曲でギターを弾いているのは、ファースト・ソロ・アルバム「オーバー・ザ・トップ」に収録されている「キラー」でもギターを弾いているゲイリー・ムーアです。何とも贅沢な組み合わせによるスリリングな演奏は悶絶ものです。
この「サンダーストーム」というアルバムは、インストゥルメンタル・ナンバーとヴォーカル・ナンバーがそれぞれ4曲ずつ収録されているのですが、インストの4曲(ジェフ・ベックがギターを弾いている「キャット・ムーヴス」と「ホット・ロック」、そして、ゲイリー・ムーアがギターを弾く「サンセット」「ザ・ブリスター」)があまりにも素晴らしく、この感じで「オーバー・ザ・トップ」のような全編インスト・アルバムを作ってくれていたら、どんな凄いアルバムになっただろう……と、聴くたびに、つい想像してしまいます。
―4曲目―
この人は、ジャンルも世代も超えて、あらゆるドラマーが憧れ、絶賛する、伝説的なドラマーです。聴いてください。
♪ レッド・ツェッペリン 「ロイヤル・オルレアン」 <ドラム:ジョン・ボーナム>
“Royal Orleans” by Led Zeppelin <Drums: John Bonham>
1976年に発表されたレッド・ツェッペリン7作目のアルバム「プレゼンス」からお送りしました。ジョン・ボーナムの驚異的なドラミングを堪能できる曲は、他にも沢山あるのですが、今回は、個人的にとても気に入っているファンキーな感じのこの曲を選んでみました。
アルバムの中では最もコンパクトな曲で、鋭くカッコいいキメも多く、一聴すると、とてもキャッチーな印象を受けますが、何度も聴いている内に、レッド・ツェッペリンならではの一筋縄ではいかない変態的なリズムが見えてきます。そして、これがまた病みつきになってしまうのです。
正直なところ、最初はジョン・ボーナムの凄さが今ひとつよく分からなかったのですが、自分がドラムを叩くようになって、その凄さが身に沁みて分かるようになりました。永遠の憧れです。
―5曲目―
この人の、まるでスーパーカーのようなスピード感を感じさせるドラムは、ロックを聴き始めたばかりの僕にとって、いい意味で分かりやすいカッコ良さに満ち溢れていました。聴いてください。
♪ ディープ・パープル 「ファイアボール」 <ドラム:イアン・ペイス>
“Fireball” by Deep Purple <Drums: Ian Paice>
これは、1971年に発売されたディープ・パープルのアルバム「ファイアボール」の冒頭を飾るタイトル曲で、イアン・ペイスの珍しいツーバス演奏を聴くことが出来ます。
ジャケットよろしく、宇宙空間に「ファイアボール」が飛び出していく場面でしょうか……格納庫の扉が開くような音が聞こえたかと思うと、間髪入れずにドラムが雪崩れ込んできます。この曲の強烈なドライヴ感を生み出すイントロ部分のドラミングは、いつ聴いても最高に気分を盛り上げてくれます。
最初から最後まで最高にカッコいい曲なのですが、極めつけは、またしても打楽器のお出ましです。
エンディング部分で打ち鳴らされる最高にいかしたタンバリンに煽られ、火の玉はさらに勢いを増して、はるか宇宙の彼方へと飛び去っていくのでした。
このタンバリンの華麗なロールも、イアン・ペイスが演奏しているのだろうか?
ところで、イアン・ペイスといえば、何と言っても「紫の炎(原題:”Burn”)」における歌のバックで、自らも歌うかのように叩きまくるドラムが圧巻です。あれをすべてシングルストロークで叩き切っている、という話を聞いた覚えがあるのですが、本当なのでしょうか。
一度は挑戦してみたいと思っているのですが……。
―6曲目―
この人は、その可愛いらしい顔からは想像もつかない、とてつもなくパワフルで疾走感のあるドラムを聴かせてくれます。聴いてください。
♪ アイアン・メイデン 「パーガトリー」 <ドラム:クライヴ・バー>
“Purgatory” by Iron Maiden <Drums: Clive Burr>
この曲は、1981年にリリースされたアイアン・メイデン2作目のアルバム「キラーズ」に収録されている、アルバム屈指のスピード・チューンです。
残念ながら、クライヴ・バーは3作目の「魔力の刻印(原題:”The Number Of The Beast”)」を最後にアイアン・メイデンを脱退してしまいました。その後、自身のバンドであるストレイタスを率いたり、プレイング・マンティスなど、数々のバンドで活動していましたが、2000年代に多発性硬化症という難病を発症し、2013年に帰らぬ人となってしまいました。
クライヴ・バー脱退後、40年以上にわたりアイアン・メイデンを支えた後任のニコ・マクブレインも凄いドラマーですが、アイアン・メイデンの衝撃的なデビューをリアルタイムで体験した身には、ポール・ディアノのヴォーカルと共に、クライヴ・バーのタイトでスピード感あふれるドラミングが細胞の奥深くまで刻み込まれているのです。今でも時折、1・2枚目のアイアン・メイデンがどうしようもなく聴きたくなってしまうのです。
―7曲目―
この人の個性的で破天荒なドラム・セットには、いつもワクワクさせてもらいました。中でも、蛇腹みたいなもので連結した超深胴(?)状態のバスドラが、なんと左右に4つも並んだ巨大セットは圧巻のひと言でした。聴いてください。
♪ ヴァン・ヘイレン 「ガール・ゴーン・バッド」 <ドラム:アレックス・ヴァン・ヘイレン>
“Girl Gone Bad” by Van Halen <Drums: Alex Van Halen>
1984年にリリースされたヴァン・ヘイレン6作目のアルバム「1984」からお送りしました。
初めてこの曲を聴いたとき、ふと頭に浮かんだ言葉は「暴れ狂うフュージョン」。それは、疾走感などという生易しい言葉ではとても追いつかない、とてつもなく巨大なモノが渦を巻いて、常識はずれの速さでこっちに突進してくる、そんなイメージでした。
ところで、どうしても弟エディに注目が集まってしまいますが、アレックスの個性的なドラミングはもっと評価されてもいいような気がします。
ヴァン・ヘイレンの曲に無くてはならない印象的なアレックスのドラム・サウンド。中でも、アレックス印ともいえる、抜けが良く、パコーンと鳴り響く、極端に乾いたあのスネアの音は、すぐにそれと判る独自の存在感を示しています。
また、豪快でありながら、トリッキーなことをサラッと入れ込んでくるところや、なぜかとてもカッコ良く聴こえる絶妙なドタバタ感といい、ドラマーとしての測りしれないスケールを感じさせます。
―8曲目―
この人は、僕にとって日本人のドラマーで初めて「カッコいいなあ」と憧れた人です。聴いてください。
♪ ブランキー・ジェット・シティ 「悲しみの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする」
<ドラム:中村達也>
“Kanashimi No Kane Ga Narihibiki Boku Wa Tada Kanashii Furi Wo Suru” by Blankey Jet City
<Drums: Tatsuya Nakamura>
これは、1994年にリリースされたブランキー・ジェット・シティ5作目のアルバム「悲しみの鐘が鳴り響き 僕はただ悲しいふりをする」のタイトル曲です。
僕は、基本的にタムやシンバルがずらっと並んだ、巨大で派手なドラム・セットが好みなのですが、そんな僕に、初めてシンプルな3点セットをカッコいいと思わせたドラマーが、中村達也さんでした。
今でも忘れられないのは、ビデオ「MONKEY STRIP」に収められている中村達也さんのこの曲の演奏シーン。僕にとって、初めて目にしたクロス・スティッキング(一方の手が他方の手の上を跨ぎ、両手がクロスした格好で叩く奏法。 ~リズム&ドラム・マガジン『知っておきたい!ドラマーのための用語集』より)は衝撃的で、その凄まじい迫力とスピード感に言葉を失い、ただ茫然と見とれるばかりでした。
―9曲目―
この人のドラミングは、とにかく豪快で、途方もないエネルギーのうねりを感じます。最近のアルバムでは、曲調に合わせたシンプルで落ち着いた感じの演奏を聴かせていますが、やっぱり僕が大好きなのは、この人の爆発しそうなくらい熱い演奏です。聴いてください。
♪ レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 「ギヴ・イット・アウェイ」 <ドラム:チャド・スミス>
“Give It Away” by Red Hot Chili Peppers <Drums: Chad Smith>
これは、1991年にリリースされたレッド・ホット・チリ・ペッパーズ5作目のアルバム「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」からの先行シングルとなった曲で、レッチリのライヴには欠かせすことの出来ない超ファンキーな名曲です。
このアルバムは、僕のお気に入りの前作「母乳(原題:”Mother’s Milk”)」とはうって変わって、ハード・ロック色がほとんど感じられない、どファンクなアルバムで、初めて聴いたときは「何かつまらないなぁ……」というのが正直な感想でした。
ところが、チャド・スミスの「レッド・ホット・リズム・メソッド」というドラム教則ビデオの中で、チャドがベースのフリーと一緒に「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」の収録曲を演奏しているのですが、そこで僕は、CDを聴いたときにはよく分からなかった”グルーヴ”というものを教えられ、つまらないと思っていたこのアルバムの聴こえ方が、ガラッと変わってしまいました。
今やお気に入りとなったこのアルバムの中でも、この「ギヴ・イット・アウェイ」の強烈なファンク・グルーヴは圧巻です。やっていることは、基本的にシンプルなパターンの繰り返しですが、この中毒性の高さは一体何なんでしょう。ヤバすぎます。
―10曲目―
僕は、愛読していた「リズム&ドラム・マガジン」で、初めてこの人の存在を知りました。正直なところ、演奏そのものは、あまりにも高度かつ難解すぎてついていけなかったのですが、とあるライヴ映像でのパフォーマンスを見たとき、その綺麗な顔に似つかわしくない見事な「暴れっぷり」に目は釘付けとなり、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。聴いてください。
♪ フランク・ザッパ 「おっぱいとビール」 <ドラム:テリー・ボジオ>
“Titties & Beer” by Frank Zappa <Drums: Terry Bozzio>
今回は、1983年にリリースされたアルバム「ベイビー・スネイクス」からお送りしました。このアルバムは、当時、通販のみの限定版としてリリースされた、同名映像作品「ベイビー・スネイクス」のサントラ盤です。僕が持っているのは、後に再発されたCD盤です。
現在、テリー・ボジオと言えば、想像を絶する超巨大要塞のようなドラム・セットと驚異的なドラム・パフォーマンスで有名ですが、かつて在籍していたフランク・ザッパ・バンドの時代から、テリー・ボジオは破天荒かつ唯一無二の存在でした。ぜひとも機会があったら、映像作品の方の「ベイビー・スネイクス」で、テリー・ボジオのぶっ飛んだパフォーマンスを確認してみてください。黒の皮パンツ一丁で、超絶テクニックのドラミングを繰り出す変態っぷりに加え、歌も歌うわ、お面を被って寸劇まで披露するわ、……もうとんでもないことになっています。
僕はといえば、憧れの気持ちが強すぎて、その昔、MAPEX社から100台限定で発売されたテリー・ボジオのシグネチャー・スネアを買ってしまいました……。今回、冒頭に掲載した写真がそれです。
その後、テリー・ボジオはさっさとdw社のドラムに乗り換えていて、ちょっとショックでした……。
* * *
この他にも好きなドラマーは沢山いるので、また機会を見つけて、第二弾をお送りしたいと思っています。お楽しみに。
-今回も最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
それでは、またお会いしましょう。See Ya!
ー第11回「ドラマー」プレイリストー
No. | 曲名 Song Title | アーティスト Artist |
---|---|---|
1 | ヒューリガン Hooligan | キッス Kiss |
2 | レッツ・ゲット・クレイジー Let’s Get Crazy | ロジャー・テイラー(クイーン) Roger Taylor (Queen) |
3 | ザ・ブリスター The Blister | コージー・パウエル Cozy Powell |
4 | ファイアボール Fireball | ディープ・パープル Deep Purple |
5 | ロイヤル・オルレアン Royal Orleans | レッド・ツェッペリン Led Zeppelin |
6 | パーガトリー Purgatory | アイアン・メイデン Iron Maiden |
7 | ガール・ゴーン・バッド Girl Gone Bad | ヴァン・ヘイレン Van Halen |
8 | 悲しみの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする Kanashimi No Kane Ga Narihibiki Boku Wa Tada Kanashii Furi Wo Suru | ブランキー・ジェット・シティ Blankey Jet City |
9 | ギヴ・イット・アウェイ Give It Away | レッド・ホット・チリ・ペッパーズ Red Hot Chili Peppers |
10 | おっぱいとビール Titties & Beer | フランク・ザッパ Frank Zappa |
■■