第30回「カバー③」

 
 皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。

 さて、今回は、まだまだ紹介したい曲が山ほどある「カバー曲」特集の第3弾をお送りしたいと思います。
余計な前置きは抜きにして、早速いってみましょう。

―1曲目―

 まずは、この「カバー」特集に3回連続での登場となるこのバンドから……。聴いてください。

 1978年に発表されたジャパンのデビュー・アルバム「果てしなき反抗」(原題:Adolescent Sex)からお送りしました。 
 僕が初めてこの曲を聴いたときのことを思い出してみると、たしかにアルバムの中でこの曲だけ、やけにハイでテンション高めな感じがしたものの、単純に「ちょっとクセがあるけどカッコいい曲だな」と思った位で、これがカバー曲だとは思いもよりませんでした。

 オリジナルは1964年のミュージカル「ファニー・ガール」の劇中歌で、主人公ファニー・ブライス役を務めた女優バーブラ・ストライサンドが歌っています。アメリカを代表する大物歌手でもあるバーブラ・ストライサンドは、1968年公開の映画版「ファニー・ガール」でもこの曲を歌っていて、彼女のキャリアを代表する曲のひとつとなっています。

 それにしても、ジャパンがカバーする曲はどれも、抜群の選曲センスに加えて、時にはオリジナルに忠実に、時には原形をとどめないほど大胆なアレンジによって、完全にジャパンの曲として新たに生まれ変わっていて、それはもう見事としか言いようがありません。
3回連続で取り上げてしまうこの気持ち、分かってもらえるでしょうか……。

―2曲目―

 ラフでパンキッシュな疾走感が文句なしにカッコいいこの曲、オリジナルは何とレゲエ・ナンバーです。聴いてください。

 この曲は、ガンズ・アンド・ローゼズを脱退したイジー・ストラドリンが1992年に発表した、イジー・ストラドリン&ザ・ジュ・ジュ・ハウンズ名義による初のソロ・シングルです。

 オリジナルは、ジャマイカの音楽グループ、トゥーツ&ザ・メイタルズが1972年に発表したシングル曲で、ザ・スペシャルズ、ザ・クラッシュ、ロバート・パーマー、横山健……等々、数多くのバンド/ミュージシャンにカバーされている人気曲です。

 ところで、かつて僕は、どうしてパンクを演っている人達は、みんな揃いも揃ってレゲエが好きなのか、不思議で仕方ありませんでした。と言うのも、人をダメにしてしまいそう(?)な、あのゆったりしたリズムが、なかなかパンクとは結びつかなかったのです。
ところがその内、レゲエは、元々パンクと同じレベル・ミュージック(Rebel Music:直訳すると『反抗の音楽』)で、社会や政治・権力に対して抵抗・抗議を示すための武器であると同時に、抑圧からの解放、精神的な自由を求める音楽だということを知り、僕のレゲエに対する見方が変わっていきました。
 まだまだ手放しで「レゲエ大好き!」と言えるほどではありませんが、お気に入りのレゲエ・ナンバーは着実に増えつつあります……。

―3曲目―

 切れ味鋭いギターで突き進んでいくドライヴ感溢れる曲が最高なのは言うまでもありませんが、こういうミドル・テンポのソウルフルな曲をご機嫌に聴かせるところも、このバンドの魅力のひとつです。聴いてください。

 イングランド出身でパブ・ロックの王者と呼ばれるバンド、ドクター・フィールグッドが1982年に発表した8枚目のスタジオ・アルバム「ファスト・ウィメン・スロー・ホーシズ」からお送りしました。
 この頃には、マシンガンのようなギター・カッティングがトレードマークのオリジナル・ギタリスト ウィルコ・ジョンソンは既にバンドを脱退していましたが、相変らずワイルドで男臭いリー・ブリローのヴォーカル、そして、残念ながらこのアルバムだけの参加となってしまったジョニー・ギター(何ていかした名前……)のキレのいいギター・サウンドが、このアルバムを後期の傑作として印象深いものにしています。

 オリジナルは、アメリカのソウル歌手、オーティス・クレイが1972年に発表した傑作アルバム「愛なき世界で(原題:Trying To Live My Life Without You)」のタイトル曲です。
オリジナルもビートの効いたリズム・ナンバーですが、このドクター・フィールグッド版では、ザクザクとリズムを刻むギターがビートをより際立たせ、威勢の良い曲となっています。
「お前のいない人生を生きていこうとしている、けれど……」別れた恋人のことが忘れられない、情けなくてカッコ悪い男のツッパリ具合が胸に沁みます。

―4曲目―

 カバー曲は、そのミュージシャン/バンドの好みやルーツを知ることが出来るので、とても興味深いものがあります。このバンドがカバーする曲は、特に要チェックです。聴いてください。

 1987年に発表されたカバーEP「メタル・ガレージ」(原題:The $5.98 E.P.: Garage Days Re-Revisited)からお送りしました。この曲のダークでヘヴィーなリフの尋常でない破壊力は、まさに一撃必殺……ノックアウトされました。

 オリジナルは、イングランド出身のポストパンク・バンド、キリング・ジョークが1980年に発表したデビュー・アルバム「キリング・ジョーク」(当時は「黒色革命」という邦題がついていたらしい……)に収録されています。

 このメタリカの「メタル・ガレージ」というEPには、キリング・ジョークの他に、ダイアモンド・ヘッド、ホロコースト、バッジィ、ミスフィッツのカバー曲が収録されています。
どの曲も刺激的で、すっかりハマってしまった僕は、また、いつものごとくオリジナル曲を手に入れようと、あちこちのCDショップを探し回る羽目に……(まだ、あちこちにCDショップがあった頃の話です)。

―5曲目―

 いわゆるグラム・ロックと呼ばれる音楽も、パンク・ロック同様、古き良きロックン・ロールが根っこにあるから、こういう曲をカバーしても、カッコ良く、サマになるのでしょう。聴いてください。

 1977年に発表されたニューヨーク・ドールズ2作目のアルバム「悪徳のジャングル」(原題:Too Much Too Soon)からお送りしました。
 オリジナル同様、典型的なオリエンタル・リフ(しかも、ニューヨーク・ドールズ版は銅鑼の音付き)で幕を開けるところからして、いかがわしい感じに満ち溢れたこの曲は、ニューヨーク・ドールズのためにあるような、正におあつらえ向きの1曲です。

 オリジナルは、アメリカのヴォーカル・グループ、ザ・コースターズが1964年に発表した曲です。
正直言って、僕はこのコースターズというグループのことをよく知らなかったのですが、ロックンロールとR&B(ドゥーワップ)を結びつけた音楽性、ユーモアに満ちた物語風の歌詞、といった個性的なサウンドで、50年代後半に多くのヒット曲を放ち、絶大な人気を誇ったヴォーカル・グループだということです。

 余談ですが、僕がこのコースターズというグループに興味を持ったのは、かつてFM長崎でやっていた「ジャンゴ・バンゴ・デラックス」というラジオ番組で耳にした「ダウン・イン・メキシコ」「ブラジル」「第九監房の叛乱(原題:Riot In Cell Block No.9)」という曲がキッカケでした。ヒロトさん、ありがとう。

―6曲目―

 このバンドは、センセーショナルだったデビュー曲からして、カバーとは切っても切れない深い縁があるのです。聴いてください。

 1982年に発表されたヴァン・ヘイレン5作目のアルバム「ダイヴァー・ダウン」からお送りしました。
 ヴァン・ヘイレンのカバー曲といえば、1978年に発表された衝撃のデビュー・シングル、ザ・キンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」や、この「ダイヴァー・ダウン」からの先行シングルとして大ヒットした、ロイ・オービソンの「オー・プリティ・ウーマン」が、まず頭に浮かぶと思いますが、これらの曲に負けず劣らずの傑作カバーだと常々思っているのが、この「グッド・タイムズ」です。

 オリジナルは、「ユー・リアリー・ガット・ミー」でお馴染みのザ・キンクスの曲で、1965年にシングル「エンド・オブ・ザ・デイ(原題:Till The End Of The Day)」のB面曲として発表されました。同年に発表された3作目のアルバム「キンク・コントラヴァーシー」にも収録されています。

 それにしても、この「グッド・タイムズ」に限らず、「ヴァン・ヘイレンのカバー曲って、どうしてこんなにカッコいいんだろう?」と、聴くたびにいつも思うのです。
 もともと持っているセンスはもちろんですが、デビュー前のローカル・アマチュア・バンド時代には、オリジナル曲の他、ハードロック、ソウル、ファンク、ブルース、オールディーズ……など、ジャンルを問わない数百曲にも及ぶカバーのレパートリーを引っ提げて、クラブに出演しまくっていたというので、数えきれないほどのライヴで鍛え上げ、磨き上げてきた演奏力・アレンジ力のなせる業なのでしょう。
当時ライヴで演っていたカバー曲って、とんでもなくカッコ良かったんだろうなぁ……なんて想像するだけでワクワクします。一度聴いてみたかったな。

―7曲目―

 「ふざけている」と言われたらその通りかもしれませんが、僕はこの突き抜けたカバーが大好きなのです。聴いてください。

 1983年に発表されたイングランド出身のパンク・バンド、ザ・トイ・ドールズのデビュー・アルバム「ディグ・ザット・グルーヴ・ベイビー」からお送りしました。
 普通のテンポでは満足できない観客のブーイングを受けて、笑うしかないような超高速で「ブルー・スエード・シューズ」を演奏するという、状況設定で笑わせるシチュエーション・コメディを思わせる、抱腹絶倒の傑作カバーです。

 オリジナルは、アメリカのロカビリー・ミュージシャン、カール・パーキンスが1956年に発表したシングル曲で、ロカビリー/ロックン・ロールのスタンダード曲として、これまで数えきれないほど多くのミュージシャン/バンドによってカバーされています。
中でも、エルヴィス・プレスリーがカバーした「ブルー・スエード・シューズ」は大ヒットを記録して、本家であるカール・パーキンスの影がすっかり薄くなってしまいました。
お陰(?)で、この曲は、エルヴィス・プレスリーがオリジナルだと思っている人が大多数を占める、という状況になってしまったようです。かく言う僕もその一人でしたが……。

―8曲目―

 この曲のオリジナルは、僕の知っているミュージシャンの曲だったのですが、イメージとあまりにもかけ離れていたので、かなり驚いてしまいました。聴いてください。

 1990年に発表されたアンスラックス5作目のアルバム「パーシスタンス・オブ・タイム」からお送りしました。

 オリジナルは、イングランド出身のミュージシャン、ジョー・ジャクソンが1979年に発表したデビュー・アルバム「ルック・シャープ!」に収録されている曲です。
 僕がジョー・ジャクソンを知ったのは、高校生の頃にヒットしていた「ステッピン・アウト」という曲がキッカケで、同じく大ヒットしたアルバム「ナイト・アンド・デイ」の印象もあって、ジョー・ジャクソンに対しては、都会的でお洒落、というイメージがずっとありました。
ところが、そんなジョー・ジャクソンのイメージを、この「ゴット・ザ・タイム」は、いい意味で思い切りひっくり返してくれました。
 ジョー・ジャクソンは、パンク、ニュー・ウェイヴ・シーンから登場したということで、デビュー・アルバムに収録されているこの「ゴット・ザ・タイム」の前のめりなスピード感についても「なるほど」と納得がいきました。
ただ、実際にデビュー・アルバム「ルック・シャープ」を聴いてみると、確かに勢いのあるビート・ナンバーが印象に残りますが、それ以上に、レゲエっぽい曲をはじめ、幅広い音楽性の片鱗が垣間見える、一筋縄ではいかない曲が多いことに気が付きます。どちらかといえば、同じようにパンク、ニュー・ウェイヴ・シーンから登場しながらも、その豊かな音楽性を発揮してきたエルヴィス・コステロに近いものを感じます。

―9曲目―

 この曲のオリジナルは一体誰の曲か、それを知った時の驚きといったらありませんでした。聴いてください。

 この曲は、既に解散していたレッド・ツェッペリンが1982年に発表した9作目のアルバム「最終楽章(コーダ)」からお送りしました。

 一体何に驚いたかと言うと、この無茶苦茶カッコいいハード・ロック・ナンバーのオリジナルが、何とあのベン・E・キングの曲だったことです。曲名は「グルーヴィン」。ベン・E・キングと言えば、あのソウルの名曲「スタンド・バイ・ミー」のイメージが強く、あまりにもギャップが大きすぎて、にわかには信じられませんでした。
 そんなこともあって、一度オリジナル曲を聴いてみたいと思っていたのですが、「グルーヴィン」が収録されているベン・E・キングのアルバム(ベスト含む)がなかなか見つからず、半ば諦めかけていました。
ところが、2012年に「アポロ・サタデイ・ナイト~ライヴ・アット・アポロ・シアター」というアルバムが発売(日本初CD化)され、そこに、ベン・E・キングによる「グルーヴィン(ライヴ・ヴァージョン)」が収録されているとの情報を得て、速攻で購入しました。
 さすがにソウル・ナンバーだけあって、ホーンが入っていたりして、かなり印象は違いますが、それでも聞こえてきたのは、紛れもなくあの「ウィア・ゴナ・グルーヴ」でした。感激。

―10曲目―

 バンド名に引っ掛けて、アメリカのアイドル歌手の曲をカバー、これにちなんだイベントも開催……と、完全にプロモーションを目的とした、話題作りのためのカバーだったようです。聴いてください。

 1974年に発表されたキッスのデビュー・アルバム「地獄からの使者~キッス・ファースト」からお送りしました。発売当初、この曲はアルバムに収録されていなかったことを知り、とても驚いたのを覚えています。
 経緯としては、デビュー・アルバムのセールスが低調だったため、急遽レコード会社からの命令で、ボビー・ライデルというアイドル歌手の曲をカバーすることになったとのこと。そして、この曲のシングル発売と連動して、「全米キッシング・コンテスト」という、誰が最も長くキッスをしていられるかを競うイベントを開催して、販売のテコ入れを図ろうとしたのですが、シングルの売れ行きもパッとせず、思ったような成果は得られなかったようです。
 メンバーはあまりこの曲を気に入っていなかったようですが、曲そのものがどうこうというよりも、自分達の意思ではなく、話題作りのために他人の曲を演奏させられた屈辱感が、そういう思いにつながったのだと思います。
実際、演奏もノリが良く、ハードな感じでカッコ良くきまっているし(少なくとも僕にはそう聞こえるのですが……)、エースを除く3人(ポール、ジーン、ピーター)が交代でヴォーカルをとるレアな曲ということもあって、個人的には結構お気に入りの1曲です。

* * *

-今回も最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第30回「カバー③」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
1パレードに雨を降らせないで
Don’t Rain On My Parade
ジャパン
Japan
2プレッシャー・ドロップ
Pressure Drop
イジー・ストラドリン&ザ・ジュ・ジュ・ハウンズ
Izzy Stradlin & The Ju Ju Hounds
3トライング・トゥ・リヴ・マイ・ライフ・ウィズアウト・ユー
Trying To Live My Life Without You
ドクター・フィールグッド
Dr. Feelgood
4ザ・ウェイト
The Wait
メタリカ
Metallica
5バッド・ディテクティヴ
Bad Detective
ザ・ニューヨーク・ドールズ
New York Dolls
6グッド・タイムズ
Where Have All The Good Times Gone ?
ヴァン・ヘイレン
Van Halen
7ブルー・スエード・シューズ
Blue Suede Shoes
ザ・トイ・ドールズ
The Toy Dolls
8ゴット・ザ・タイム
Got The Time
アンスラックス
Anthrax
9ウィア・ゴナ・グルーヴ
We’re Gonna Groove
レッド・ツェッペリン
Led Zeppelin
10キッシン・タイム
Kissin’ Time
キッス
Kiss

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