第27回「アウトロー」


 皆さん、こんにちは。「くのいち」ことクノテツヤです。

 さて、今回のテーマは「アウトロー」です。

 ほとんど日本語化していますが、あえて訳せば「無法者」「ならず者」「はみ出し者」といった感じですね。
文字通り、“アウト(out:「外れる」)”+“ロー(law:「法」)”で、要するに「悪党」のことですが、一方で、映画や音楽の題材としてよく取り上げられるビリー・ザ・キッドやボニー&クライドのように、どこかロマンを感じさせる魅力的な存在でもあります。
 どうしても他人の目が気になってしまう自分には、そんな風にはみ出す度胸はありませんが、心の中ではいつも、人にどう思われようと自分に正直な「アウトロー」でありたい、と思っているのです。
「孤独」も「危険」も受け入れて、「常識」も「限界」も飛び越えて、我が道を行く「アウトロー」達への憧れを掻き立てる、そんな刺激的な曲をピックアップしてみました。

―1曲目―

 トップ・バッターは、ある映画がキッカケで再評価され、すっかり有名になった超絶カッコいいインストゥルメンタル・ナンバーです。映画の強烈な印象に引っ張られて、この曲もバイオレンスがお似合いな感じになってしまいましたが、本当はそういう物騒な曲ではない、ということを最近知りました。聴いてください。

 1994年に発表された映画『パルプ・フィクション』のオリジナル・サウンドトラックからお送りしました。

 この曲、元々は東地中海の民族曲らしく、実はちゃんと歌詞もあり、内容はエジプト娘に恋をした男性の歌だそうです。言われてみれば、たしかにメロディがアラビアっぽいというか、エキゾチックな感じがします。
これを「サーフ・ギターの王」と呼ばれたディック・デイル(&ヒズ・デル・トーンズ)が、1962年にインスト・アレンジでカバーしてヒットさせたのが、この「ミザル―」という曲です。

 ところで、『パルプ・フィクション』に限らず、クエンティン・タランティーノ監督の映画は、劇中の音楽がやたらカッコいいのです。監督本人が相当な音楽マニアだけあって、選曲センスが抜群で、映画は観たことがないのに、ついサントラを買いたくなってしまうのです。
 以前、何かの雑誌に「クエンティン・タランティーノが選ぶアルバム10枚」みたいな記事があったのですが、そこに載っていたアルバムを全部聴いてみたくて、まだ持っていなかったアルバムを速攻で買い揃えたことがありました……。ほとんど病気ですね。

―2曲目―

 ロカビリーは、音楽のカッコ良さはもとより、リーゼントに革ジャン、グレッチのギター、ウッド・ベース、スタンディング・ドラム……と、見た目のクールなカッコ良さがたまりません。聴いてください。

 1981年に発表されたアメリカのロカビリー・バンド「ストレイ・キャッツ」のデビュー・アルバム「涙のラナウェイ・ボーイ(原題:Stary Cats)」からお送りしました。

 ストレイ・キャッツの登場は、なかなか衝撃的なものがありました。
 ロカビリーといえば50~60年代というロックン・ロール黎明期の古い音楽、という懐メロ的なイメージをひっくり返し、実は現代にも通用するクールでいかした音楽だということを、パンク同様、ロックン・ロール・リバイバルの大きな流れの中で、ネオ・ロカビリーの名のもとに証明したのが、ストレイ・キャッツです。
 そして、僕自身がロカビリーのカッコ良さに目覚めたのも、間違いなくストレイ・キャッツの影響大です。 

―3曲目―

 これは、ジャンルも、国籍も、時空も……あらゆる境界線を飛び越えて妖しく響く、最高にいかした音楽です。聴いてください。

 1994年に発表されたラテン・プレイボーイズのデビュー・アルバム「ラテン・プレイボーイズ」からお送りしました。

 僕がラテン・プレイボーイズにハマったのは、ブランキー・ジェット・シティのドラマー・中村達也さんがやっていた深夜のラジオ番組で、この「ニュー・ザンドゥ」を聴いたことがキッカケでした。古いのにぶっ飛んでいて、新しいのに懐かくて、こちらの想像力を掻き立てる、どこにも居場所のないような“はみ出し感”に、グッと心を掴まれました。
 ラテン・プレイボーイズは、ロス・ロボスのメンバー2人が、プロデューサーのミッチェル・フルーム、エンジニアのチャド・ブレイクと組んだ、実験的サイド・プロジェクトです。
ミッチェル・フルームとチャド・ブレイクは、僕がロス・ロボスにハマるキッカケとなった1996年発表の「コロッサル・ヘッド」というアルバムも手掛けていて、それまでロス・ロボスといえば「ラ・バンバ」のような素朴で能天気なイメージしか持っていなかった僕に、このバンドの恐るべき雑食性と懐の深さを教えてくれました。
それ以来、ずっとロス・ロボスを追いかけています。

―4曲目―

 この曲を聴いていると、場末の酒場にたむろして大騒ぎしている、荒くれ者揃いのバイカー達、そんなイメージが頭に浮かびます。聴いてください。

 アメリカのハード・ロック・バンド「リトル・シーザー」が1992年に発表したメジャー2作目のアルバム「インフルエンス」からお送りしました。

 バンドの中心人物であるロン・ヤングは、筋骨隆々の逞しい体にタトゥーだらけの腕、カーリーなロング・ヘアにヒゲという、いかにも酒とタバコとバイクが似合いそうなワイルドなルックスで、男心をくすぐります。
それに加えて、とにかく歌が上手い。しかも、その少しザラついた声質が、そこはかとない色気と哀愁を漂わせていて、大の男の涙腺を刺激するのです。困ったものだ……。

―5曲目―

 無機質な高速マシン・ビートが、この曲の容赦ない凶暴性を際立たせ、カッコ良さ倍増です。聴いてください。

 1992年に発表されたアメリカのインダストリアル・メタル・バンド ミニストリー5作目のアルバム「ΚΕΦΑΛΗΞΘ‐詩篇69‐(原題:”ΚΕΦΑΛΗΞΘ(記号ママ)” “Psalm 69: The Way To Succeed And The Way To Suck Eggs”)」からお送りしました。

 元々、インダストリアル・ロックに興味はなかったのですが、メガデスが開演前にライヴ会場で流していたミニストリーの「バーニング・インサイド」という曲が超絶カッコいい、という話を聞いたのがキッカケで、ミニストリーに興味を持ちました。
 まずは最新アルバムを聴いてみようと思い、ちょうどその頃リリースされたアルバム「ΚΕΦΑΛΗΞΘ‐詩篇69‐」を手に入れました。そして、無事にミニストリー初体験を果たした僕が、そのカッコ良さにすっかりハマって、当時聴きまくっていたのがこの曲でした。

―6曲目―

 初めてこの曲を聴いたとき、得体の知れない強力な力に引き込まれていくような感覚を覚えました。聴いてください。

 アメリカのロック・ミュージシャン、元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードが、1982年に発表したソロ11作目の傑作スタジオ・アルバム「ブルー・マスク」からお送りしました。

 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代からソロ活動まで、その長いキャリアを通じて、常に孤高の「はみ出し者」であり続けたルー・リードは、既成の枠に収まらない不思議な力を持った楽曲を数多く残してくれました。
そして、僕がこの曲に感じた得体の知れない力は、その最たるものです。
 耳に聞こえる音そのものは決して過激ではないけれど、生々しく、そして禍々しい存在感を放って、渦巻くカオス(混沌)のような音が、溶岩流のように不気味な速度で迫ってきて、容赦なく僕を飲み込んでいったのです。
それは、音量とか音圧とか、速度とか密度とか、そういった物理的な次元を超えてしまったような、それまで感じたことのない強烈な力です。ブラックホールに引きずり込まれるのって、こんな感じなのだろうか……?

―7曲目―

 この曲は、ひたすら暗くて鬱屈したアルバムの最後に登場して、すべてのモヤモヤを木っ端微塵に吹っ飛ばしてくれました。聴いてください。

 アメリカの伝説的オルタナティヴ・ロック・バンド ニルヴァーナが1989年に発表したデビュー・アルバム「ブリーチ」からお送りしました。

 今更、説明する必要はないかもしれませんが、メジャー・デビュー作となる2枚目のアルバム「ネヴァーマインド」の大ヒットで世界をひっくり返し、後にカート・コバーンの夭折により伝説となってしまったニルヴァーナが、サブ・ポップというインディー・レーベルから発売した記念すべきデビュー・アルバムです。
 僕は「ネヴァーマインド」でニルヴァーナを知ったので、このデビュー・アルバムは後追いで聴くことになったのですが、ひたすら暗く、深く沈み込むような曲の連続(……というのが第一印象)に、段々気が滅入ってきて、途中で逃げ出したい気分になりました。そんな僕を、アルバムの最後を締め括るこの「ダウナー」が救ってくれたのです。
一体、この曲のどこに救われたのか、正直言ってよく分かりませんが、この曲が存在したお陰で、その後も「ブリーチ」を聴き続けることが出来たのは間違いありません。

 しかし、面白いもので、今ではこの「ブリーチ」が、ニルヴァーナのアルバムの中で一番しっくり来るようになりました……。果たしてそれはいいことなのか?と、一抹の不安を感じています。

―8曲目―

 ヴァラエティに富んだ豪華絢爛なアルバムの中で、最もクールでしびれる1曲です。聴いてください。

 この曲は、1991年にガンズ・アンド・ローゼズが発表した2作目のスタジオ・アルバム「ユーズ・ユア・イリュージョンⅠ」からお送りしました。

このアルバムは、一応3作目と称される「ユーズ・ユア・イリュージョンⅡ」と同時発売され、実質的には2枚組、トータル2時間半を超える大作アルバムとなっています。
 衝撃のデビュー・アルバムと数々の破天荒な行動で、良くも悪くも、ポーズではない本物の「ワル」を見せつけたガンズ・アンド・ローゼズですが、2作目では一転、あり余る才能と創作意欲をこれでもかと詰め込んだ、ゴージャスでヴァラエティに富んだアルバムを作り上げました。そんなアルバムの中で、僕が真っ先に文句なしで気に入ったのは、ハードボイルドな空気を纏った、ダークで、最高にクールなこの曲でした。
 作曲は、このアルバム発表後にバンドを脱退してしまったイジー・ストラドリン。
彼こそが、ガンズ・アンド・ローゼズを最高の「ロック・バンド」たらしめた音楽的キーマンであり、そんな彼の手によるこの曲は、イントロのドラム・アタックから、哀愁を帯びたフラメンコ・ギターがフェードアウトしていく最後の1音まで、全く隙の無い完璧な1曲です。

―9曲目―

 このバンドが描き出すのは、男が憧れる純粋で美しくてロマンチックな「アウトロー」の世界。聴いてください。

 1993年に発表されたブランキー・ジェット・シティ(以下、「BJC」)3作目のスタジオ・アルバム「C.B.Jim」からお送りしました。

 こんなにもファンキーで、パンキーで、ヤンキーな曲、ちょっと他ではお目にかかれません。
この曲を聴くたびに胸に湧き上がってくるのは、もはや「日本のバンドが、こんなカッコいい曲をやっているのか」という驚きではなく、「日本のバンドだからこそ、こんなにもカッコいい曲を生み出すことができるんだ」という誇らしい気持ちです。
 ブランキー・ジェット・シティという架空の街の住人たちの物語(という話を何かで読んだ記憶があるのだが、果たして真偽のほどは……?)という独自の世界観に貫かれた魅力的な楽曲、トリオという最小人数の潔いバンド編成、個性の塊のような3人が繰り広げるバトルにも似たスリリングな演奏……と、語り尽くせないほどの魅力に溢れたBJCは、解散から四半世紀が過ぎた現在においても、いまだ唯一無二の圧倒的な存在感を放ち続ける、日本の宝とも言うべき奇跡のようなバンドです。

―10曲目―

 不穏な空気が漂うイントロ、焦燥感をかき立てる性急なビート、刃物のように尖った音が、鈍い光をギラつかせて、容赦なく襲い掛かってきます。聴いてください。

 1980年に発表されたアメリカのハードコア・パンク・バンド「デッド・ケネディーズ」のデビュー・アルバム「暗殺(原題:Fresh Fruit For Rotting Vegetables)」からお送りしました。

 ジェロ・ビアフラの個性的すぎる、上ずったような痙攣ヴォーカルひとつ取ってみても、このバンドの異質なヤバさがビリビリ伝わってきます。一方で、その音楽性は、幅広いバックグラウンドを感じさせるキャッチーなもので、その絶妙なバランスが病みつきになるのです。
 この曲に限らず、強烈な社会風刺、ブラック・ユーモア、政治的・反体制的メッセージなどを、限界ギリギリ(はみ出している?)の過激な表現で歌ったり、レコード・ジャケット等に挑発的なアートワークを採用したり……と、すべてが世間を騒がせるセンセーショナルなもので、確信犯のような気もしますが、とにかく腹の括り具合が半端ありません。
何と言っても、バンド名からして「デッド・ケネディーズ」ですから……。

* * *

-今回も最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

 それでは、またお会いしましょう。See Ya!

ー第27回「アウトロー」プレイリストー

No.曲名
Song Title
アーティスト
Artist
1ミザル―
Misirlou
ディック・デイル&ヒズ・デル・トーンズ
Dick Dale & His Del-Tones
2涙のラナウェイ・ボーイ
Runaway Boys
ストレイ・キャッツ
Stray Cats
3ニュー・ザンドゥ
New Zandu
ラテン・プレイボーイズ
Latin Playboys
4ラム・アンド・コーク
Rum And Coke
リトル・シーザー
Little Caesar
5ジーザス・ビルト・マイ・ホット・ロッド
Jesus Built My Hot Rod
ミニストリー
Ministry
6ブルー・マスク
Blue Mask
ルー・リード
Lou Reed
7ダウナー
Downer
ニルヴァーナ
Nirvana
8ダブル・トーキン・ジャイヴ
Double Talkin’ Jive
ガンズ・アンド・ローゼズ
Guns N’ Roses
93104丁目のDANCE HALLに足を向けろ
3104-Chome No Dance Hall Ni Ashi Wo Mukero
ブランキー・ジェット・シティ
Blankey Jet City
10ホリデイ・イン・カンボジア
Holiday In Cambodia
デッド・ケネディーズ
Dead Kennedys

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